零落の季節

□3.YUTA
3ページ/4ページ


日が暮れたのであんずと智は先に帰らせた。

「あのさ、アニキ」
「何?」
「あんずさん、何かおかしくない?」
「やっぱり、ゆうたくんも気づいた」

2人は向かい合って、話していた。

「なんかピリピリしてたし」
「ずっと考え事してるし」

うーん、と2人は首を傾げる。
合わせ鏡のように同じ動き。

「ゆうたくん」

小さい声で呼ばれた。
ゆうたが扉の方を向くと、忍が中を覗いていた。

「忍くん、どうしたの?」
「あんず殿と智殿はござらんか?」
「2人供、もう帰ったよ」

そう言うと忍は安心したように息をついて部屋に入ってきた。

「?」

忍は少し躊躇う仕草をしたが、やがて口を開いた。

「実は先週、智殿を見たでござるよ。……でも、今日とはまるで別人でござった」
「どうゆうこと?」

ゆうたが聞く。

「ん〜……、まるでゆうたくんと、ひなたくんが別行動してるみたいな」

忍の言葉を聞いて、ゆうたは目を丸くした。

「アニキみたいに人様に迷惑かけてたの?」
「……ゆうたくん」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ