にわか雨
□6.環境
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『翠!』
いつも何処からか翠を呼ぶ声がした。
声の方を向くと、美しい少女が翠に微笑みかけていた。
『水季ちゃん』
少女、水季が笑みを深める。
母親同士が仲が良かった。
小さい頃は良く母親に連れられてお互いの家に行き来した。
水季の方が歳が1つ上だと知ったのは、水季が小学校に入学した時だった。
翠が小学校に入学すると当たり前のように一緒に登校した。
それを同級生にからかわれた。
翠は少しショックだった。
『気にしない、気にしない』
水季はそう言う。
この時まで、2人の目線の高さは同じだった。
水季の祖母の仕事が何なのか、翠はよく知らない。
たまに水季の家に遊びに行くと来客があった。
その人達の相手を祖母がしていた。
『翠、外に行こう』
そうして水季は翠を広い裏庭に連れ出した。
『うちに湯治に来るんだって』
『とうじ?』
『うん』
それきり、水季は何も言わなかった。
翠が5年生、水季が6年生の頃。
『背が伸びたね』
水季に見上げられて、初めて気づいた。
クシャクシャと水季は翠の頭を撫でる。
『うわっ、やめてよ!』
翠が手をはらうと、水季はスクスク笑った。