にわか雨
□5.教室
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日の出前の早朝、水季はパジャマ姿で裏庭に立っていた。
右手には短刀を握っていた。
左手で自分の髪を一房つまんだ。
ザクッと短刀で髪を切った。
短刀を置いて、傍にある扇子を持つ。
扇子を開き、切った髪を空に投げ、風を送った。
髪が空を舞うと雲が厚くなり、地面に落ちると同時に雨が降りだした。
パキッ。
「!」
水季は扇子を見る。
ひびが入っていた。
「そろそろ変え時か」
水季は扇子を畳み、家の中に入った。
雨の音で翠は目を覚ました。
(……雨?……!)
飛び起きて窓を開ける。
ザアァーー
予報では晴れだった。
だが目の前では雨が強く、地面を叩いていた。
「……水季」
翠は震える声で、悲しげな顔で水季の名を口にした。