にわか雨

□3.甘味
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「水季!」

喫茶店の扉を開けると同時に翠は叫んだ。

「おお、翠」

水季は嬉しそうに言う。
一方翠は怒りを顕にしながら水季のいる席に近付く。

数ヶ月前と同じ流れ。

ただ違うのは

「今度は智を連れ出して!何やってるんですか!」

水季の向かいに座っていたのは智。

「しかもあんず先輩の時と同じ文章まで送ってきて!」


『智を預かる。智の荷物を持ってこい』

あんずを連れ去った時も水季は同じ文章を翠に送った。


「翠が付き合ってくれんのだから仕方なかろう。それに、智とゆっくり話しもしたかったしのう」
「智、帰るよ」

翠が言う。

「何だ、学院に戻るのか?」

水季はつまらなそうに言う。

「……まだ準備がありますから、すみません」

智も申し訳なさそうに言う。

「仕方ないか」

水季も席を立つ。
会計をして店を出る。

「ごちそうさまでした、水季さん」

智はぺこりと頭を下げる。

「またな、智」

水季は商店街の方に歩いて行った。

「はぁ〜」

翠はため息をついた。

「えっと……ごめんね、翠くん」
「智は悪くないよ」
「………」

智は翠の横顔を見上げた。

翠は水季の後ろ姿でじっと見ていた。


その表情はまるで……。
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