気まぐれ小話3

□母親の選択
1ページ/1ページ

 
「あぁ…ウィル……」
 
 
あの冒険から数ヶ月。
エリザベスは身篭っていた。
もちろん、夫のウィル・ターナーとの子だ。
 
これから先10年も会えないけれど、代わりにこんなに素晴らしいものを残していってくれた。
 
 
例え母親1人だろうが、立派に育てていくと決めたエリザベス・スワンもといエリザベス・ターナー。
だが父親もいない今、金銭的な余裕はない。
だからといって労働は体に負担がかかりすぎる。
 
そこで思いついたのが、執筆だった。
これならば紙とペンさえあれば家にいながら出来る。
もし売れれば結構収入もいいはずだ。
 
幼い頃から文才があると言われ続けたエリザベス。
もしかしたらお世辞だったのかもしれないが、やってみる価値はある。
 
 
そして彼女は、ウィルについて書く事にした。
 
彼を中心に今までの壮絶な冒険をつらづらと。
だがやはり、別れてあの緑の光線を見た後はわからない。
どうせノンフィクションとして出すつもりはなかったので、そこからは想像で書く事にした。
 
「確か女性はいなかったわよね、あの船…」
 
その点では安心である。
 
 
「……ん?でもちょっと待って。あのゴロツキの中に若く綺麗なウィルが来たら……」
 
危ない。非常に危険だ。
 
「あ、でもお父様がいるのよね、だから…いやまさか親子でそんな事には……」
 
 
そういえばお城にいた頃、使用人の女達がハマっていたものがある。
 
――同性愛。
 
さらにしぼれば、ボーイズラブ。
 
 
使用人達が騒いでいるのを聞いて問い詰めたら、所謂BL本を出した。
そして読んでみたら結構面白くて、ハマる寸前で海賊が来たのだ。
あの頃の暮らしがもうずいぶんと懐かしい。
 
BLは需要も多いようだし、書いてみてもいいかもしれない。
その対象が自らの夫であるという事にさして疑問を抱かなかったエリザベスは、少し趣向を変えた執筆を始めた。
 
 
 
「ん〜と…………」
 
 
 
 
『ウィル、よく来たな』
 
『父さん…ずいぶん待たせてしまって…すみません』
 
『おまえはまだ若いからな、ここには妙な輩も多い、用心していけ』
 
『ありがとう父さん』
 
『……にしても、若い頃のわしそっくり…いや、それより綺麗だ』
 
『…父さん?』
 
『可愛い息子が誰かのものになる前に、わしが可愛がってやる』
 
『ちょっ、父さんっ………んん〜っ…』
 
 
 
 
 
 
「はっ!!」
 
そこでエリザベスは我に返った。
 
「どうしてこんなにあっさり想像出来るのかしら…」
 
手元には、今の妄想がつらづらと書かれている。
我ながら驚きだ。
 
だがこれはチャンスとばかりに妄想を膨らましていったエリザベス。
 
子供が産まれる時には、陰のベストセラーとなって世の腐女子達を虜にしていたのだった。
 
 
 
 
 
 
―――10年後
 
 
「あぁ、ウィル!!早く船での出来事を聞かせてちょうだい!!」
 
「エリザベス…?僕は君達の話を聞きたいんだが…」
 
「そんなのは後でいいからっ。ほら、1日で10年分を語るのよ?早く早くっ」
 
「…エリザベス、10年の間に何が……」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
〜後書〜
Q.ホントに彼女に何があった。
A.BL界でベストセラー連発。
パイレーツの映画3を姉が借りてきたんで、なんとなく見てたらこんなネタが。
あら不思議(ヲイ)
ジャックとお父上も書きたい。
親子萌え。
エリザベスっていうと銀魂のエリーを…(黙れ)
しかも意外に長く…ι
いや、すみませんマジで。
2008.01.08

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ