献上小説置き場

□楽しい楽しい文化祭
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そろそろ本番。
衣装がギリギリに出来た為、今回着るのが初めてとなった。
まぁ、サイズの面では問題ないだろう。
 
ツナが着替えて出てきた瞬間、その場にいた誰もが息を飲む。
背中につくくらいの長さのウィッグをつけ、まずはボロボロの服装をする。
だがそれでも、天使のように可愛らしかった。
もはや灰まみれの役は務まらないのではないかと思う程だ。
 
だが本人は、皆の固まった表情を別の意味でとってしまう。
 
「……や、やっぱり似合わないよね…男の俺がこんなの着て…。どどどうしようっ、もう本番なのにぃ〜っ」
 
そんな風に困っている姿もまた可愛くて、癒されてしまう。
 
 
「綱吉、可愛い。早くおまえのドレス姿を見たいもんだな」
 
ザンザスが王子の格好でツナのウィッグにそっと触れた。
それがまた絵になっていて、女子達も思わず見とれてしまう。
 
 
そして、とうとう上演時間になった。
 
 
 
観客席では、母である奈々や獄寺の姉ビアンキ、たまに遊びに来るフゥ太やイーピンやランボも揃っていた。
 
「ツッ君とザン君の晴れ舞台だもの、しっかり撮っておかなくちゃ!」
 
そう言う奈々の手には録画も出来るデジカメが。
準備万端だ。
 
「ツナ兄とザン兄、楽しみだな〜」
 
フゥ太は何かのためにしっかりランキングブックを持っている。
 
ランボもイーピンも、わくわくしながら待っていた。
 
 
 
ブザーが鳴り、幕が開かれた。
 
 
ナレーションが冒頭でシンデレラと呼ばれるまでを説明。
そしてシンデレラと継母や義姉達が登場する。
 
「シンデレラ、この床は何?きちんと掃除なさい!」
 
継母役には黒川花。
割とピッタリだ。
 
「私、これからお出かけするから、ちょっと髪を結ってよ」
 
義姉1役には笹川京子。
意地悪になりきれていないが、これが精一杯である。
 
「シンデレラ…私、お腹空いたわ」
 
義姉2役にはクローム髑髏。
こちらも無表情で意地悪さが全くないが、これでも頑張っている。
 
そして真打ち。
 
「あああのっ、床は今すぐ掃除致しますっ。髪も結いますっ。ご飯はその後すぐに…っ」
 
わたわたしながら懸命にそれらをこなすシンデレラのツナ。
いつもとあまり変わらないが、舞台上で女の子の格好をしている分さらにいい。
観客席だけでなく舞台裏までもが癒しに包まれた。
 
 
「そして、継母と義姉達は舞踏会へと出発して行きました」
 
ナレーションがそう進めた。
ちなみに言っているのは、先生にふんしたリボーンもといリボ山。
面白そうなので参加しているらしい。
 
 
「はぁ…私も舞踏会へ行きたい…」
 
シンデレラがボロボロの服と埃だらけの自身を見る。
 
「お困りのようね」
 
「貴方は……」
 
派手な音楽と共に現れたのは、魔法使い。
その役にはルッスーリアが抜擢された。
確かに、怪しい雰囲気は普段から溢れている。
 
「私は魔法使い。貴方を舞踏会へ連れてってあげるわ」
 
「でもこんな格好で…」
 
「大丈夫よん」
 
そして魔法使いが杖を一振り。
すると煙が立ち込める。
その間にツナは慌てて舞台裏へ下がり、ドレスに着替える。
着替えたツナを見て、傍にいた者は鼻血を吹いて倒れた。
 
 
煙が晴れると、なんとも可愛らしい姫が現れた。
観客席からは歓声が。
 
「あら、ずいぶん可愛らしくなった事。でも、貴方は12時までにはここへ帰って来なくてはダメよ?いいわね」
 
「はい。ありがとうございます、魔法使いさん」
 
 
「魔法使いの用意したドレスを着て、ガラスの靴を履き、カボチャの馬車に乗ってシンデレラはお城の舞踏会へ行きました」
 
 
舞台は城内へ。
 
「う"お"お"お"ぉぉい!さっさと嫁候補見つけねーかぁ!!」
 
王子の傍にはお付の役、スクアーロが。
長い髪を後ろの高い位置でしばり、騎士のような格好をしている。
女性達の黄色い悲鳴が上がった。
 
「うるせぇカスが。んなの必要ねぇ………」
 
そう言って容赦なくお付を殴ったのは、王子役のザンザス。
強面だが、それなりにカッコイイ為これまた女性達から悲鳴が上がる。
 
 
そこへシンデレラが到着した。
 
「まぁ…なんて素敵なお嬢さんなの…」
 
「ホント、何処の貴族の方かしら?」
 
そんな女性1、2の役には何故か獄寺と山本。
不服そうだが、ツナのドレス姿には完全に魅入っていた。
 
 
ガラスの靴が脱げないように懸命に歩くシンデレラ。
精一杯な感じがまた愛らしい。
 
「こ、これが舞踏会……素敵」
 
台詞ももはや棒読み状態。
まぁ元からさして上手くもなかったが。
 
 
そこへ王子がシンデレラに近づいた。
 
「綺麗な姫…結婚を申し込みたい」
 
「「「………はぁぁああぁぁ??!!」」」
 
舞台上の全員が一斉にそう叫ぶ。
ここはまだダンスを申し込むだけのはず。
なのに何故いきなり求婚……。
 
練習と違う台詞に焦ったツナ。
だがそれをまさかのナレーションであるリボーンがフォローした。
 
「シンデレラは突然の王子の求婚に戸惑いますが、返事をする前に12時の鐘が鳴ってしまうのです」
 
そして無理矢理鐘を鳴らす。
 
「あ…わ、私もう帰らないと…っ」
 
そう言い、シンデレラはガラスの靴を片方脱ぎ捨てて去って行った。
 
 
 
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