献上小説置き場

□意外な敵
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しばらく呆然とその光景を見ていたジプネーラだが、そのうちクツクツと笑い出す。
 
「ふふふ……まさかボンゴレボスが直々にここまで来るとは……」
 
そしてその桁外れの戦いに巻き込まれぬよう少し離れる。
 
「おい、あの用意を」
 
「はっ」
 
部下は頭を下げると、こっそりと部屋を後にした。
そしてすぐに大きめの何かを持ってくる。
そう、それはツナにとってザンザスの次に天敵であろう、死炎バズーカだった。
 
 
 
「ザンザスっ、俺の声が少しでも聞こえているのなら、戻ってきて!!!!」
 
「……………」
 
未だに攻撃を続けるザンザス。
お互い一旦距離をとる。
 
彼に攻撃も出来ず、かといって攻撃を受ける訳にもいかず、避けたり受け流したりするのが精一杯のツナ。
だがずっとこのままという訳にもいかない。
 
 
そこへ、先程死炎バズーカを持ってきた男がツナに向けてそれを構えた。
これでボンゴレは終わりだ。
 
その様子にザンザスは目を見開く。
そして頭の中で何かが繋がった。
 
「つ………」
 
「え?」
 
ツナはバズーカに気づいていない。
 
男はその引き金を引いた。
 
 
「っっ綱吉!!!!」
 
 
「……えっ…??!!」
 
 
バフン、とその場に似つかわぬ音。
その煙の中にいたのは、なんとザンザスだった。
 
引き金を引いた男は焦る。
確かにボンゴレボスを狙ったのだ。
だが、突然その間に彼が飛び込んできた。
 
 
ザンザスはよろける。
これにも麻酔薬が含まれていたようだ。
 
ツナは慌てて駆け寄った。
 
「ザンザス!!!!」
 
「つな…よし……」
 
いつもの彼の顔。
いつもの彼の声。
自分を見る優しい深紅の瞳。
 
 
「ザンザス………」
 
涙が一滴だけ流れる。
だが安心してもいられない。
 
ツナはバズーカを撃った男を睨みつける。
男は怯え、またバズーカを構えた。
だがその引き金を引くより早く、ツナがその場から消える。
次の瞬間、男の悲鳴が室内に響いた。
構えていたバズーカごと腕が凍らされている。
死ぬ気の零地点突破改だ。
 
「くっ……」
 
ジプネーラは後ずさりする。
その間にもツナは次々と彼の部下を倒していっていた。
 
そしてあっという間に、残っているのはジプネーラだけになる。
 
「ひぃっ……」
 
ボスといってもその知恵と戦略で登りつめた男、実践での戦力はほとんどないといっていい。
たとえ少しばかり強かったとしても、この炎の前では赤子同然だろう。
 
 
「おまえは…許さない…」
 
ツナの冷たく怒りのこもった瞳にジプネーラが映し出される。
 
「ゆっ…許してくれっ…」
 
だがツナの瞳の色は変わらない。
一般人には情けをかける彼でも、マフィアにかける情はない。
 
ボワッと額とグローブの炎が強まる。
悲鳴を発する間もなく、ジプネーラは絶対零度の氷に包まれたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
ツナの額から炎が消える。
そしてやっとゆっくり立ち上がったザンザスに駆け寄り手を貸した。
 
「ザンザス、大丈夫…?」
 
「あぁ……手間かけさせたな…」
 
「何言ってんの、俺なんて2回も助けられちゃったよ」
 
低いがないよりマシな肩を貸し、2人は部屋を出た。
そしてやっと館の外へ出る。
すでにヴァリアーのメンバーは敵を倒し集まったところだった。
 
「ボスっ」
 
「大丈夫ぅ?」
 
「しししっ、派手にやられたみたいだね」
 
「麻酔薬ですか?今解毒を!!」
 
レヴィは慌てて解毒剤を取り出す。
 
「準備は万全だよ」
 
そう言ったマーモン。
その手にはスイッチが。
 
「館全体に爆弾を仕掛けといたから、早く離れた方がいいよ」
 
相変わらず用意周到なマーモンに苦笑し、ツナはザンザスに解毒剤を飲ませるとみんなとその場を離れた。
そしてマーモンがスイッチを押す。
ものすごい爆発音と共に、大量の炎と煙が辺りに立ち込めた。
 
 
 
「終わった……ね」
 
「……あぁ」
 
まだ解毒剤が完全には効いていないザンザスは、ツナの肩に手を乗せて寄りかかり、そう応える。
 
 
「帰ろっか」
 
そのボンゴレボスの一言で、皆は帰路につくのだった。
 
 
 
 
 
 
 
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