献上小説置き場

□意外な敵
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こちらはベネロファミリー。
先程までツナ達と戦っていた組織だ。
 
「ボス、連れてきました」
 
「ご苦労。………ん?コイツはボンゴレ10代目ではないではないか」
 
「はい。ボンゴレ暗殺部隊ヴァリアーのボスです」
 
するとベネロファミリーのボス、ジプネーラの顔色が変わった。
 
「ほう、あのヴァリアーの……」
 
連れてこられたのはザンザス。
だが、その深紅の瞳は焦点が合っておらず、表情は人形のように無だった。
 
「例の人質用の洗脳装置にかけましたので、彼はもうただの人形です」
 
「炎はどうだね?」
 
「そちらもご心配なく。死炎バズーカの効力はほんの一瞬、敵を捕獲する為のものですから」
 
「ほう……」
 
ジプネーラはほくそ笑む。
 
 
そこへ若い部下が駆け込んできた。
 
「失礼しますっ!!ヴァリアーがこちらへ向かっているとの情報が!!」
 
「何人だ?」
 
「それが、たったの6人だそうで……」
 
「6人?随分なめられたものだな」
 
「いえ、しかしそのほとんどが幹部との事で…」
 
ジプネーラは考え込む。
だが、いくら幹部とはいえ舞台はこちらのアジト、自分達が有利なのは変わらない。
それに、こちらには最も強力な武器がいる。
 
 
「いいだろう、迎えてやろうではないか……ボスを取り戻しに来た愚かな部下達を……」
 
そしてザンザスの肩を軽く叩く。
 
「期待しているよ、私の忠実なしもべ、ザンザスよ」
 
「はい、主」
 
無表情のまま、ザンザスはそう言って頷くのだった。
 
 
 
 
 
 
 
一方、正面突破を決めたツナ達。
こそこそしていても仕方がない。
 
「ツナちゃん、貴方は真っ直ぐ進んで。きっとボスは重要な人質として奥にいるはずだから」
 
「ルッスーリア……うん、ありがとう」
 
ツナは今、ヴァリアーと同じ真っ黒なコートを羽織っていた。
せめて少しでも変装をと、リボーンが渡したものだ。
マーモンではないが、ついでにフードも被っている。
だから先程、敵はツナの…ボンゴレボスの存在に気づかなかったのだ。
 
 
「気をつけろよぉ、綱吉ぃ」
 
「うんっ、スクアーロも!!」
 
ついに最後までツナについてきていたスクアーロも敵に足止めされた。
だが、おそらく次の扉が目的地だろう。
 
この向こうにザンザスがいる
 
ツナは超直感でそう感じていた。
 
 
 
キィ――……
 
やけに静かな中、扉の音が響く。
大量の銃撃を警戒して扉を開けた後一旦退くが、どうやらその気配もない。
 
「……………」
 
ツナは恐る恐る中へ入る。
薄暗い中、視線の先に見慣れた、そして捜していた彼が見えた。
間違いない。
 
「ザンザス……!!!!」
 
駆け寄ろうとしたツナだが、突然室内の明りがつく。
眩しさに一瞬目を細めるツナだが、すぐに警戒して辺りを見回した。
 
 
「やぁ、まさかここまで辿り着くとはね……ヴァリアーの幹部殿」
 
そう言ったのはジプネーラ。
ツナはこの男に見覚えがあった。
ベネロファミリーのボスだ。
 
「だがまさか、ここまで来たのがこんな小さなガキだとは……果たして余興になるかな」
 
フードを深く被ったツナの正体に、敵はまだ気づいていない。
 
「あんたがボスか……ザンザスは返してもらう」
 
「それはどうかな?」
 
「何…?」
 
すると目の前から突然炎が飛んできた。
それは自分に飛んでくるはずのないもの……。
見慣れた憤怒の炎。
 
「ザンザス…?何で……」
 
するとジプネーラが勝ち誇ったように高笑いをした。
 
「彼はもはや君達の知っている彼ではない。私の忠実なしもべなのだよ」
 
「どういう…?」
 
「こういう事さ。……ザンザス、このネズミを倒しなさい」
 
「はい、主」
 
その瞬間、また憤怒の炎が飛んでくる。
それをギリギリ交わすと、ツナはザンザスを見た。
 
光のない目。
表情のない顔。
冷たい声色。
素早いがぎこちない動き。
 
操られているのは一目瞭然だった。
驚きはしない。
ある程度の想定範囲内だ。
 
だが憤怒の炎とやり合えるのは………
 
 
ツナはコートを脱ぎ去る。
そして愛用のグローブを装着し、額に死ぬ気の炎を灯した。
 
それを見て周囲は驚愕する。
 
「あの炎は……」
 
「ボンゴレボス!!」
 
その瞬間、2つの炎がぶつかった。
 
無表情なザンザスに対し、苦しい表情を浮かべながら攻撃をかわしていくツナ。
やはり戦うしかないのだろうか…。
 
 
2人の両手がぶつかり合う。
お互い、ほとんど互角だった。
 
「ザンザス…こうして戦うのはリング戦以来だね………覚えてる?あの時もこうして真正面からぶつかり合ったよね」
 
「…………」
 
 
届いて
 
ほんの少しでいいから
 
奥深くに眠らされたその意識に
 
どうか届いて………
 
 
 
 
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