献上小説置き場
□意外な敵
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弾丸が飛び交う。
それに混じり、2種類の炎も高速で動いていた。
ここはイタリアの某跡地。
ザンザスとツナは敵対マフィアと戦っていた。
戦況はこちらが有利。
それもそのはず、死ぬ気や憤怒の炎は弾丸など吹き飛ばす。
レベルが違った。
だが突然、ツナに向かって何かが撃たれた。
バズーカのようだが何かが違う。
ザンザスは嫌な予感を感じ、咄嗟に飛び出していた。
だが、バフンとあっけない音がしただけで、煙が晴れるとザンザスは無事だった。
「ザンザスっ、大丈夫?!」
ツナは駆け寄ろうとするが、敵が邪魔をしてそう声をかける事しか出来ない。
「あぁ………あ?」
大丈夫と言おうとしたザンザスだが、立ち上がろうとしてよろけ、その場に膝をついてしまった。
「これは……」
すると妙なバズーカを撃った奴が勝ち誇った顔で近づいてくる。
「テメェら、何を………」
「ほう、まだ少し動けるのか?だが立てないようだな。ボンゴレ10代目を狙ったが、まぁ貴様でもいいだろう」
「これは……」
「わかったかね?お得意の炎が出せないだろう。このバズーカは我々の組織が開発した死炎バズーカ。その名の通り、炎を殺してしまう弾丸なのさ。それに少し麻酔薬も入れさせてもらったがね」
「くっ………」
いくら薬に免疫がある彼でも、この強力な麻酔には勝てなかった。
炎を出そうにも本当に出ない。
そこへ動けないザンザスに、男が何かを注射した。
意識が朦朧としてくる。
睡眠薬だ。
その様子に気づいたツナだが、まるでそちらに行かせない様にしているかのように敵が邪魔をしてくる。
「ザンザス!!ザンザスっ!!!!」
薄れゆく意識の中、ザンザスが最後に見たのは必死に自分に呼びかける恋人の顔だった。
「10代目っ!!」
少し離れた敵を倒し終えた獄寺がツナの元へ走る。
こちらも全て終わっていた。
……だが、そこにいたのはツナ1人だった。
「10代目、ご無事で………じゅ、10代目…?」
ボーっと立っているツナに、獄寺はその顔を覗き込んで彼の安否を確かめる。
どうやら傷は擦り傷程度のようだが、様子がおかしい。
「ザンザス………」
死ぬ気の炎は未だに額に灯っており、その表情は一見冷静に見えるが怒りに満ちていた。
そこで獄寺は、ザンザスの姿がない事に気づく。
「10代目、アイツは…」
「連れて行かれた……」
「えっ?!」
「あいつら…許さない」
今にも敵アジトへ乗り込みそうな勢いだったツナを、獄寺は無理矢理ボンゴレ本部へ連れ帰った。
その場の敵は倒したが、ほとんどがただの雑魚だった。
あちらも戦力はほとんど減っていない。
そこへいくらボンゴレボスでも、乗り込んでいけば間違いなく返り討ちだ。
本部で事情を聞いた守護者とヴァリアー達。
最初は「何故あんな強いザンザスが?!」と首を傾げていた一同も、死炎バズーカの存在を聞いて納得した。
「そんなものがあるなんて……」
「だからあのボスが…」
するとツナが立ち上がった。
「俺、ザンザスを助けてくる」
「それは許さねぇ」
そう言ったのは、リボーンだった。
「相手はそんなバズーカを所持してんだ、炎が武器のおまえがもし撃たれたらどうする」
確かに、最もな意見だ。
「じゃあこのままにしろっていうの?!」
「違う。アイツはアイツの部下、ヴァリアーに任せとけ」
「………嫌だ」
「何?」
「ザンザスは俺を庇って撃たれたんだ、俺が助けに行かなくてどうする」
するとリボーンは鋭い目つきになり、ツナを睨んだ。
「だから何だ、おまえはボンゴレのボスなんだぞ。わざわざ行かせる気はねぇ」
だがツナも譲らなかった。
「俺は行く。この手でザンザスを救い出す」
リボーンが何か言いかけた時、ルッスーリアがツナの肩に手を置いた。
「駄目よリボちゃん、ツナちゃんは言ったらきかないんだから。大丈夫、私達がツナちゃんを守るわ」
するとベルも、もう片方のツナの肩に肘を置く。
「しししっ、王子久々に暴れたい気分だし?」
それに続き、マーモンとレヴィも賛同した。
「……………」
リボーンは苦い顔をする。
確かに、彼の頑固さは自分もよく知っていた。
「諦めろぉアルコバレーノ、後は俺達に任せとけぇ」
スクアーロがとどめにそう言った。
「………ちゃんと帰ってこいよ」
「うん、ありがとリボーン」
それからリボーンはヴァリアーを一通り睨みつけ、「ツナに何かあったらテメェら覚悟しとけよ」と銃を構えて脅す。
それに見送られながら、ツナとヴァリアーはザンザス救出に出発した。
ちなみに獄寺や山本はボンゴレ本部に残った。
もしかしたらこれを利用して、手薄になったボンゴレを敵が攻めてくるかもしれないからだ。
ザンザスが囮という可能性は十分にある。
それでもボンゴレボスのツナを行かせたのは、彼があまりにも怒っていたから。
普通に見えるが、それでも守護者やリボーンは殺気にみなぎるツナに気づいていた。
きっとそれは、恋人を守りきれなかった自分自身にも向けられているのだろう。
「10代目、どうかご無事で…」
獄寺がそう呟く。
だが不吉を表すかのように、空には暗雲がたちこめていた。