献上小説置き場

□その炎の名は
3ページ/4ページ

 
 
「……さて、この惨劇の後始末、どうする気?」
 
部屋を埋め尽くす人の山。
きっと外にも沢山いるのだろう。
 
「カス共に任せる」
 
「また?可哀想だよ」
 
「その為の部下だ」
 
「……確かに」
 
軽く笑い合いながら、その不快なものしかない部屋を出て行く。
 
 
「ザンザス、ありがとう」
 
「当然の事をしただけだ」
 
 
 
 
ゆっくり歩きながらだったので時間がかかったが、やっとボンゴレの本部が見えてきた。
 
「でも、よく憤怒の炎出せたね。あの時点でもう炎切れかけてたのに」
 
「あぁ…自分でもよくわからんが、とにかくムカついたからな」
 
「敵に?」
 
「…いや、自分に」
 
そういえばものすごく自分を責めていたなぁと思い返す。
 
「それであんなに炎が出せたんだ?」
 
「そうだろうな」
 
それは…八つ当たりとも言えないだろうか…。
 
 
中から2人が見えたのか、獄寺や山本、スクアーロやルッスーリア達も門の先で待っていた。
 
「みんな出てきてくれたんだ…なんか大袈裟…」
 
「ボンゴレボスが誘拐されたとなりゃあ一大事だろーが」
 
「ザンザスがいれば一大事には入らないんだよ」
 
「……まぁな」
 
それからザンザスは思い出したように「あ…」と呟いた。
 
「何?」
 
「いや、炎だが……あれは憤怒っつーより、おまえへの愛の炎なのかもな」
 
「……はぁぁ??!!」
 
あまりの彼らしからぬ言葉にしばし反応が遅れる。
 
「どうした」
 
「だだだってっ、ぁぁあ愛??!!」
 
変なところでイタリア男だ。
というか、あんな惨劇を見てそれを愛の力だと言われてもなんだか嬉しくない。
 
「不満か?だったら恋の炎とでも…」
 
「そっそれはもっとヤバイから!!」
 
「そうか?なら愛の炎だな」
 
気に入ったのか、ザンザスは上機嫌でツナの肩を抱き歩き始めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
数日後。
 
「今日もボスの憤怒の炎はすごいね」
 
マーモンが遠目から呟いた。
すると今まで前線で戦っていたザンザスがいきなりこちらに振り返った。
そして……
 
「憤怒の炎じゃねぇ!!愛の炎だ!!!!」
 
そう叫んだ。
 
その言葉に敵は吐血、勝手に自爆した。
マーモンも思わず幻術を解いてしまう。
 
少し遠くではツナが呆れたような恥ずかしいような顔で零地点突破改を披露していた。
 
 
 
それから、彼が炎を使った時は必ず「愛の炎」と言うようになったという。
もちろん、ツナがいる時限定であるが。
 
 
ボンゴレ10代目ボス誘拐事件は、部下達に新たな苦悩を与えたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ