献上小説置き場

□その炎の名は
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「ザンザスっ!!!!」
 
その叫び声が、いつまでも頭の中に残っていた。
 
 
 
敵マフィアとの交戦中、長期遠征の直後のこの戦闘で消耗が激しかったザンザス。
つい敵に隙を与えてしまった。
そこへツナが敵と彼との間に飛び込み、足を負傷。
ザンザスが駆けつける前に敵に捕まってしまったのだ。
 
飛び込んだ時に自分の名前を叫んだ彼の声。
それが最後だった。
こちらより早く、敵が綱吉を抱え上げて退いたのだ。
最悪だ。
ボンゴレ10代目が拉致されるなんて。
 
 
 
ザンザスはしばらくその場に放心状態になっていた。
それを見かねてヴァリアーの面々が声をかける。
 
「ボス…多分向こうにも何か要求があるはずよ。でなければその場で殺してるはずだもの」
 
だからここは冷静に対策を立てましょ?というルッスーリアの言葉も、今の彼には届いていなかった。
 
 
 
綱吉が連れて行かれた
 
敵に捕まった
 
自分を庇って怪我をした
 
あんな奴らに連れ去られた
 
 
 
ザンザスの周りを異様な殺気が覆う。
それは次第に形に現れ始めた。
もはや炎を出すのも困難な状態で、憤怒の炎を全身に纏ったのだ。
 
「ボス…?!」
 
「そんな…もう体力はほとんど残っていないはずなのに……」
 
その威圧感に、ヴァリアーの幹部達でさえも圧倒されていた。
 
 
「綱吉……」
 
もはや周りなど見ていないし聞こえていない。
彼の頭にあるのは、愛しい恋人ただ1人。
 
それからザンザスは突然走り出した。
というより飛んだ。
憤怒の炎を放射させて加速したのだ。
 
その様子を呆気に取られて見ていた部下達だが、慌てて我に返る。
 
「ちょっとっ、ボスやばいんじゃないのぉ?!」
 
「かっけーけど、ダイジョブなん?ボス」
 
 
「……問題ねーだろぉ」
 
そう言ったのはスクアーロだった。
 
「スクアーロ、何でそう思う?」
 
「あのボス見ただろぉ。あんなボスを止められんのは綱吉くれーだぁ。リング戦以上のキレっぷりだぜぇありゃあ…」
 
「「確かに…」」
 
一同は呟く。
 
「それに、心配するとしたら相手の方か、その後の始末が俺らに振りかかってくる事だぁ」
 
「「……確かに…」」
 
だが1つ疑問が。
 
「ねぇスクアーロ、どうしてボスはあんなに沢山の炎を…?」
 
ルッスーリアの問いに、スクアーロは剣の血を拭いながら言った。
 
「あ"ぁ"…それは憤怒の炎だからだぁ」
 
「……?」
 
よくわからない。
全員がそんな顔をしていた。
 
「……そもそも炎なんてのは、気持ちの問題なんだ。死ぬ気だってそーだろぉ、気力の問題だ。って事は、ボスは今までにないくらい怒りが強ぇって事だろぉ」
 
そう、9代目と戦った時よりも。
優しさを見つけたから、怒りがそれに反比例してさらに強くなる。
 
納得した様子の彼らに背を向け、スクアーロは他の部下達の所へ行き指示を与えていた。
 
 
ここだけでこの騒ぎだ。
あの状態のザンザスが大暴れすればさらに面倒臭い事になるだろう。
 
どうか程々にっ…!!そう願う面々だった。
 
 
 
 
 
 
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