献上小説置き場

□恋の始まり
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次の日。
ボンゴレの控え室では重苦しい空気が漂っていた。
それはもちろん、今日あのヴァリアーと顔を合わせるから。
 
そこへノックの音が。
全員がそちらに集中した。
だが、入ってきたのはボンゴレが所属する会社の社長、雲雀だった。
 
「何、どうしたのみんな。そんなんじゃ演奏出来るもんも出来ないでしょ」
 
「あー…今日ヴァリアーと会うと思うとどうも…な」
 
苦笑しながら山本がギターを調整する。
 
「それより、社長が直々にお出ましとは、どうした?」
 
リボーンに一瞥やり、雲雀は軽く不機嫌になって言った。
 
「そのヴァリアーなんだけど、最近売れてきてるみたいじゃない。大丈夫なの?」
 
「ハッ、そう簡単には抜かせねーよ」
 
「だったらいいけど。頑張ってよね、向こうの会社にだけは負けたくない」
 
「………?」
 
リボーン以外が首を傾げる中、雲雀は秘書の草壁を連れて去っていった。
 
 
ツナは暫く考え込んでいたが、意を決したように立ち上がり、こう宣言した。
 
「お、俺、ヴァリアーの皆さんに挨拶してくるっ」
 
それにはメンバーは驚きだったが、リボーンが止める。
 
「おい待て、それじゃあこっちが舐められんだろーが」
 
普通は新人の方が挨拶に来るのが常識である。
まぁ、噂を聞く限りではとてもそんな事をしてくるとも思えないが。
 
それでもツナは譲らなかった。
 
「だって、このままじゃ何か嫌だし、それに出来れば仲良くしておきたいじゃん」
 
「だったら俺が行く」
 
「ダメだよリボーンはっ!!」
 
彼が行けば、喧嘩になる事間違いなしだ。
 
「と、とにかくっ、俺1人で行くからっ」
 
怖いけれど、他のメンバーを連れて行ってもきっとダメになる。
獄寺はリボーン同様喧嘩をふっかけそうだし、山本は天然すぎて何を言うかわからない。
ランボは俺以上の怖がりだからきっと無理だろう。
そう、余ったのは自分しかいないのだ。
リーダーは一応リボーンだが、ここはボンゴレのヴォーカルとして頑張らなければ!!
ツナは深いため息をつき、ヴァリアーの控え室へと向かうのだった。
 
 
 
 
 
 
 
一方ヴァリアーの控え室。
やはりこちらもボンゴレを気にしていた。
 
「ほら〜スクアーロっ、早く挨拶に行ってきなさいよ〜っ」
 
そう言って彼の長い銀髪を引っ張るのは、ヴァリアーのマネージャーであるルッスーリア。
こんな口調だが、れっきとした男である。
 
「引っ張んな!!大体、何で俺なんだよ?!ボスが行きゃーいいじゃねーか!!」
 
「あんたが1番適任なのようっ。ボスじゃちょっと向こうを怖がらせちゃうだけじゃない。レヴィだって口下手だし、ベルはあのワガママな性格、マーモンは無口……残るは貴方しかいないのよ。ちょっと目つき悪いけど、ボスよりはマシだから大丈夫!!」
 
「う"お"お"ぉい…それ全然褒めてねーぞぉ」
 
それでも、おそらく普通に挨拶出来るのはこの個性的なメンツの中で自分しかいないだろう。
スクアーロも、面倒事は避けたかった。
 
「…しょうがねーなぁ……ちょっくら行ってくっか」
 
そう言ってスクアーロが控え室のドアを開けたのと同時に、なんとも鈍い音がした。
 
「…ん?」
 
どうやら何かにぶつかったらしい。
廊下に出てみると、おでこを押さえてうずくまっている少年がいた。
 
 
「……テメェ誰だぁ?」
 
すると少年はこちらを見上げて一瞬怯えるが、すぐに立ち上がって深々と頭を下げてこう言った。
 
「おっ俺、ボンゴレのヴォーカルの沢田綱吉って言いますっ」
 
その瞬間、ヴァリアーのメンバーが一斉にそちらに振り返った。
 
 
綱吉は怯えていた。
まさかこんな対面になろうとは、相変わらず間抜けである。
 
スクアーロはとりあえず綱吉を中へ招き入れた。
 
 
 
 
 
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