献上小説置き場

□過去
1ページ/3ページ

 
「っ………」
 
何気なく見ていたテレビ。
そこに映った場所を見て、ザンザスは固まった。
 
特になんて事はない狭い路地。
イタリアだが、行った事などない。
だが……似ていたのだ。
…昔、まだ9代目の養子に入る前に住んでいたあの薄暗く汚い路地を……。
 
 
 
 
 
「ザンザスいるー?」
 
そこへ偶然にもツナが入ってきた。
ヴァリアーの拠点地であるここにはもう何度も訪れている。
ザンザスならいつもの部屋にいると言われ、来たのだ。
 
だが部屋に入り目撃したのは、テレビを凝視したまま固まっている恋人の姿だった。
 
 
「ザ…ザンザス…?」
 
それでようやく気づいたのか、ザンザスはゆっくりとツナの方を見た。
 
「…来てたのか」
 
「うん。……どうしたの?」
 
「いや…」
 
ツナは気になってテレビを覗き込む。
すると、そこにはまだあの路地が映っていた。
 
「…ここがどうかしたの?」
 
「いや、知らねぇ場所だ」
 
「だって……」
 
「…ただ……似てたんだ」
 
「似てた…?」
 
ツナはザンザスの横に座る。
相変わらずフカフカなソファーだった。
 
そしていつもと様子の違う恋人に戸惑う。
なんというか、普段のような威圧感だとか威厳だとかが今の彼には感じられなかった。
 
 
「ザンザス…ホントにどうしたの?」
 
「……俺はあのクソジジイに引き取られて良かったと思ってる」
 
ぽつりと、突然ザンザスが話し出した。
 
「感謝なんぞしてねぇが、恨んじゃいねぇ、今となってはな。そのおかげで俺はおまえに会えた。ぬくもりも感じられる」
 
「ザンザス…」
 
明らかにおかしい彼。
それがテレビの映像が原因なのは、さすがのツナでもわかった。
 
イタリアのなんてことない路地が映っている。
ただそれだけ。
大通りとは違い、少し薄暗くて殺伐としていた。
ただ、彼は知らないと言う。
 
 
「もしかして…昔住んでいた所に似てた…とか?」
 
結構当てずっぽうに言ったのだが、真面目に頷かれた。
 
ザンザスの過去はツナも大体は知っている。
9代目の養子になる前はかなり苦しい生活をしていたらしい。
もしかして、それを今思い出しているのだろうか…。
 
 
 
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ