献上小説置き場

□突然来た変態
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そいつは突然、やってくる―――……
 
 
 
 
「じゃあ獄寺君、また明日」
 
「はい!!お気をつけ下さい、10代目!!」
 
もう家の真ん前なんだけど……というツナのツッコミは声に出る事はない。
きっと何を言っても笑顔で「10代目が心配ですから」とか言うに違いない。
というか前に言われたし。
 
 
ツナが家の中へ入ると、獄寺は自宅へ戻ろうと来た道を引き返した。
 
 
 
「クフフフフフ、ボスの為ならばどんな回り道も遠回りもする、ですか……これはまたご立派な忠誠心ですね」
 
自宅まであと数メートルという所で、怪しい笑い声と共に男が現れた。
顔を見るまでもない。
独特の頭の房と笑い声を聞けばわかる。
 
「テメェは……六道骸!!」
 
「正解です。逆光なのによくわかりましたね」
 
「俺はテメェより怪しい生き物を見た事がねぇ」
 
「クハハッ、全くマフィアというものは……相変わらず面白い」
 
そして一歩ずつ近寄って来る骸。
当然、獄寺はダイナマイトを構えて警戒する。
 
「近寄んな。テメェにはいろんな恨みつらみがあんだよ」
 
「おや?どんなです?」
 
「しらばっくれんな!!人の身体を乗っ取って10代目を襲ったり、女に化けて10代目にキスしたり!!」
 
「あぁ…アレは僕も予想外でした。まさかクロームがあんな行動に出るとは…」
 
だからアレは僕じゃありません、と笑顔で言う骸。
もちろん、納得など出来ない。
 
「チキショウ、10代目に謝れ!!つーか死んで詫びろ」
 
「それなんですがね」
 
骸はまた一歩近寄った。
 
「先程から10代目10代目って……何なんです?そんなにあの沢田綱吉が大事ですか?」
 
「ったりめーだ!!」
 
「貴方も彼にキスしたいと?」
 
「なっ……俺は純粋に10代目を尊敬してんだ!!」
 
「ならば………」
 
クフッと小さく笑うと、骸は幻術で獄寺のダイナマイトを消す。
そして彼の頬にチュッと軽いキスをした。
まるでクロームがツナにしたような……。
 
一瞬きょとんとする獄寺だが、すぐにされた事を理解した。
 
「テメッ………なんて事しやがる!!」
 
「おや?僕…というかまぁクロームですが……があの時彼にキスしたのを怒っていたんでしょう?」
 
「あぁ。それが何だ」
 
「君は自分がしてもらえなくて拗ねていたんでしょう」
 
「…………はぁ??!!」
 
「だから僕の身体でキスしてあげました。満足ですか?」
 
何でそうなる?!と頭が混乱マックスな獄寺に対し、骸は一人楽しそうに「あ、もしかして口が良かったんですかね?心配いりません、貴方が望めば今すぐにでもして差し上げますよ」と全く逆方向に考えが飛んでいた。
 
 
獄寺は本能的に理解した。
コイツは本物の変態、関わったらろくな事がない、と。
これ以上怒っても相手の思う壷だろう。
 
「……勝手に言ってろ」
 
そうして骸の横を通り過ぎようとしたが、その瞬間腕を掴まれて引き寄せられた。
抵抗しようとすれば頭を押さえられ、唇に何かが触れる。
それが目の前の変態の唇だと理解するまでに、そう時間はかからなかった。
 
「っっ……放せ!!」
 
ドンッと骸の身体が飛ばされる。
獄寺は道にしりもちをついた骸を見下ろし、言い放った。
 
「これ以上変な真似してみろ、その無駄な頭の房をむしり取ってやるからな!!」
 
そしてダッシュでアパートの中へ。
 
残された骸はポカンとしていたが、次第にクフクフと笑い出した。
 
「全く、本当にマフィアというものは面白い…」
 
いや、彼が面白いのかもしれない。
 
「あんな真っ赤な顔で威嚇しても、逆に誘っているようにしか見えませんよ」
 
どうやら彼のドS魂に着火させてしまったらしい獄寺。
 
当の本人は部屋の中で頭を抱えて、結局一睡も出来ないのであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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