献上小説置き場

□奇蹟の5分間
2ページ/4ページ

 
 
それから紅茶とお菓子を少しずつつまむ。
 
「…あの、ザンザス…さん?」
 
あれ?同い年なのになんでさん付けなんだろう…と自分で疑問に思うツナ。
なんだか自分を知らない彼は他人のような気がしていた。
 
「何だ」
 
でもぶっきらぼうにそう言う彼は、やっぱり自分の知っている彼で。
どんなに姿が変わっていようが自分を知らなかろうが、やっぱり愛しくて。
 
 
「さっきの質問ですが…貴方が俺の部屋に遊びに来たんです…」
 
「はぁ?何で俺が」
 
「未来の事はあまり言えませんが…俺は貴方が……10年後の貴方が好きです」
 
「何…?」
 
「でも、今の貴方も好きになりました。だって、どんな時でもどんな姿でも、ザンザスはザンザスなんだもん。大好きなザンザスだもん。全部全部好きなんだもん」
 
言いたい事を言ってスッキリしたツナを、ザンザスは不思議そうな目で見つめる。
 
突然目の前に現れた知らない少年。
ソイツに告白されてしまった。
しかも結構熱烈に。
だが自分はコイツを知らない。
…ただどうしてか、その切なそうな顔がやけに気になった。
何故自分がここへ来たのか、知りたくなった。
 
 
 
 
5分たったのだ。
 
 
煙が晴れると、いつもの恋人の姿が。
だが何故かだいぶ疲れているように見えた。
 
「おかえり、ザンザス」
 
「あぁ…」
 
それから新たに紅茶を持ってくる。
10年前の自分とはいえ、飲みかけは嫌だろう。
 
 
「ザンザス、10年前はどうだった?懐かしかった?」
 
「いや…そんな暇はなかった」
 
「え?」
 
「あ〜…いや、何でもねぇ。それよりテメェはどうした。10年前の俺と会ったんだろ」
 
ザンザスはそれが心配で仕方がなかった。
もし10年前の自分が彼に何かしていたら………例え自分だろうと許さないだろう。
 
「えっと………告白しちゃった」
 
「……は?」
 
「だから、告っちゃった。だってなんかどうしても言いたかったんだもん」
 
いきなりで10年前のザンザス驚いてたよ〜とケラケラ笑うツナ。
何故告白したかなんて、本当にわからない。
もしかしたら、自分を全く知らなかった彼に何かを残したかったのかもしれない。
 
「それだけか?」
 
「うん、それだけ」
 
はぁ〜とため息を吐くザンザス。
とにかく、何もなくて何よりだ。
 
 
 
「でも、なんか可愛かったな〜10年前のザンザス」
 
「何?」
 
「まだまだ子供って感じで。威圧感は相変わらずだったけど…」
 
「……………」
 
ザンザスは黙ってツナを後ろから抱きしめる。
 
「…ザンザス?」
 
「………………」
 
腕にこめる力が強まる。
これはもしかして……
 
「ザンザス、ヤキモチ?」
 
「……………………」
 
どうやらそうらしい。
 
ツナは前に回されたたくましい腕に手を添える。
 
 
…なんだ、今も十分可愛いじゃん
 
 
怒るだろうからこんな事、絶対に口には出さないけれど。
 
 
 
今日はいろいろと得した気分になるツナだった。
 
 
 
 
 
 
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ