献上小説置き場

□障害があっても
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「……何だよそれ…」
 
「武…?」
 
山本は勢いよく立ち上がる。
イスが音をたてて倒れた。
 
「何だよそれ……何でセンセーがここやめなきゃなんねーんだ?やめるなら俺だろ?!」
 
「……は?」
 
「俺、生徒なのに……センセーはセンセーなのに……好きになっちゃって……」
 
「は……?だっておまえ、さっき好きな奴いるって……」
 
「だから、それがセンセーなの!!」
 
「……………………」
 
スクアーロは思わず見上げたまま間抜けな顔で固まる。
それから頭の中で整理をし、やっとその意味を理解した。
途端、顔が真っ赤になり、慌てて俯いて隠す。
 
叫んだ山本も、今更ながら恥ずかしくなって、イスを戻して静かに座った。
 
そして短い沈黙が教室を埋める。
 
 
「……だからさ…辞めないでくれよ、センセー…」
 
「武……怒ってねーのかぁ…?」
 
「何をだ?」
 
「だから…さっき無理矢理キスしちまった事…」
 
「だって、俺もセンセー好きだし。…まぁ、さっきのはさすがに驚いたけどな」
 
 
「「…………………」」
 
 
それから両者、再び黙ってしまった。
 
それを打破したのは、またもや山本だった。
 
 
「俺さ、まだ中学生だし全然子供だけどさ…そのうちセンセーと肩並べて歩けるように頑張るからさ」
 
「…………」
 
「だからさ、待っててなんて言わねーけど、きっと追いついてみせるから」
 
「武……」
 
 
教師と生徒。
そんな事はお互いわかっている。
性別も立場も、大した事がないわけではない。
 
それでも、好きという気持ちがあれば……それに勝るものはない。
きっと乗り越えられる。
2人なら……2人でなら………。
 
 
 
 
「センセー、補習はどうすんだ?」
 
「…武ぃ、2人きりの時は名前で呼べぇ」
 
「名前……スクアーロ…先生?」
 
「先生はいらねぇ」
 
「じゃあ……スク…アーロ……」
 
すると山本はしゅう〜と赤くなりしぼんでいく。
 
「な…なんか……恥ずかしいのな…」
 
そんな彼を見て、スクアーロは堪らず噴き出す。
全く、可愛い生徒だ。
そして今は、可愛い恋人でもある。
 
 
「必ず追いついて来いよぉ、武」
 
「おうっ」
 
「んじゃ、そのために補習やるかぁ」
 
「え"っ……」
 
「こうなりゃた〜っぷり教えてやるからなぁ。……いろいろと」
 
「なっ……」
 
 
まだまだ追いつけないかもしれない……そう思う山本だった。
 
 
 
 
 
 
→おまけ
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