献上小説置き場
□雨が晴に惹かれる時
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とりあえず中に入れる。
こんな所で立ち話の方が危険だ。
談話室のような所でいいだろう。
確か飲み物もあったし。
だがそこにはすでに、厄介な人物がいた。
「テメェ……」
「あらスクアーロ…と……貴方確か、ツナちゃん側の晴れの守護者じゃな〜い!!確か了ちゃんよねっ」
「おぉ、あの時手合わせした奴だな!!」
「何々スクアーロ、貴方私に黙って了ちゃんと密会?ズルイじゃないのよん」
くねくねと近づいてくるルッスーリアを避けながら、スクアーロは「これから仕事あんだろぉがぁ」と言って彼を追い出した。
何か飲むか聞くと、牛乳が飲みたいと言ってきた。
牛乳……あるのだろうか。
だが奇跡的に、牛乳瓶を発見した。
暗殺部隊の拠点地に牛乳………何とも不釣り合いだが、とりあえずそれを出した。
すると渡された了平はそれを一気に飲み干した。
「極限にうまかったぞ!!」
「あ"…あ"ぁ"………」
普通一気に飲むか。
スクアーロは自分の分のコーヒーを用意し、向かいのソファーに座った。
「…で、俺にボクシング部に入れだぁ?」
「おぉ、その話だったな!!」
どうやらまた忘れていたらしい。
「てかテメェの学校の話だろぉ?学生でもない俺が入れるわけねーだろぉがぁ」
「む……ではコーチという事でどうだ?!顧問の奴はやる気がないのだ」
「って、俺はボクシングなんてやった事ねぇ」
すると了平はテーブルに手をつき、乗り出した。
「いいや、貴様のその動き、まさにボクシングをやるためにあるのだ!!」
「ルッスーリアに頼め…」
自分は剣術専門であって、武道の心得はない。
「アイツはボクシングを馬鹿にしたからダメだ」
あっさり却下された。
「……俺はそんなに暇じゃねえ」
「…………」
「だが…」
「ん?」
「たまになら…テメェの相手くらいはしてやってもいいぜぇ」
その瞬間、了平の顔がパァァと明るくなり、さらに乗り出してきた。
「本当だな?!」
「ちょっ、顔近ぇぞぉ」
男らしいと思っていたその顔は、よく見るとまだあどけなさが残り、少し見入ってしまった。
それからスクアーロはハッとして、慌てて目線をそらす。
了平は嬉しそうにソファーに座った。
それからしばらくは了平がボクシングについて語り、スクアーロはそれをコーヒーを飲みながら聞いていた。
他の事はすぐ忘れるくせに、ボクシングの事に関してはかなり詳しかった。
「…で………と、そろそろ帰らねば」
「あ"ぁ"、もうそんな時間かぁ」
気付けばもう6時半を回っている。
スクアーロはこれから仕事だ。
「では頼んだぞ、サメ刀!!」
「っ……だから俺の名はスクアーロだ!!」
せっかく門の前まで送ってやったというのに、相変わらずの覚えの悪さだ。
「スク…ア……?えぇいまどろっこしい!!では頼んだぞ、スク!!」
「っ…………!!!!」
満面の笑みでそう言うと、了平は修行のためか走って帰っていった。
残されたスクアーロは、名残惜しいが早く去ってくれてよかったと思った。
だって、今自分はきっとありえないくらい顔が赤いと思うだろうから……。
かすかな恋の予感だった。
→後書き