献上小説置き場
□どこの僕でも
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「ねぇ君」
「……えっ、俺?!」
呼ばれたらしいディーノは慌てて飲んでいたコーヒーを置く。
「そっちの僕と付き合ってるらしいけど、本気なの?」
「えっ…そりゃあもちろん!!俺は誰より恭弥を愛してるぜ」
隣の恋人に向けて言った言葉だが、尋ねたこちらの雲雀は顔色を悪くする。
「…すごく鳥肌が立った……そっちの僕、こんな奴でホントに満足してるのかい?」
「愚問だね。いらなかったら即捨ててるよ」
しれっと言う雲雀に、ディーノは涙目で感動する。
「恭弥ぁ…」
普段では味わえない幸福である。
「じゃあ僕も聞くけど、そっちの女子、君はまだ幼いようだけど、本気なのかい?」
いきなり話を振られたイーピンはビクッと反応し、それでも次の瞬間には真っ直ぐに斜め向かいの雲雀を見た。
「えぇ、本気です。私は、雲雀さんを愛しています。今までも、これからもずっと」
「イーピン……」
いつもなら「好き」の言葉さえも恥ずかしがってなかなか言わない彼女のその台詞に、隣に座る雲雀は感動していた。
「んで、そっちの僕もそうなのかい?遊びとかでなく?」
「君が僕ならわかるでしょ。好きでもない相手とわざわざ群れたりしないよ」
「そう」
そして雲雀はお互いにフッと笑う。
「僕はどこの世界でも僕らしいね」
「そうらしいね」
その瞬間、ボフンと音がして煙が立ち込めた。
そしてその煙が晴れた時には、向かいに座っていた雲雀とディーノの姿は何処にもなかった。
「…雲雀さん……今のって…」
「どうやら自分達の世界に帰ったらしいね」
「そうみたいですね。…なんだか私、一気に疲れちゃいました…」
「なら、帰ってゆっくりする?君から愛の告白も聞けたわけだし」
「っっ!!あああれは……っ」
「何、嘘なの?」
「……違います…けど…」
「ならいいじゃない」
「はいっ」
そして仲良く席を立ったところで、雲雀が固まる。
「?どうしたんですか?雲雀さん」
「あいつら…」
「へ?」
「あいつら、ただで飲んで帰って行った……」
「あ…」
伝票をグシャッと握り締め、「次に来た時は絶対咬み殺す!!」と呟く雲雀。
隣では、それを苦笑して見ているイーピンがいた。
→後書き