記念品小説

□女の子×男の子
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ビアチア
 
 
  
ビアンキは悩んでいた。
 
骸戦から、ある男の事が気になって仕方ないのだ。
 
 
 
「はぁ……」
 
「あれ?ビアンキ、どうしたの?ため息なんて珍しい」
 
ツナからの呼びかけにも、視線だけそちらによこし、また戻す。
 
 
「そういえば、今日ランチアさん来るって」
 
「っ!!」
 
「えっ?!」
 
突然目を見開いたビアンキにツナは驚く。
思わず1歩後ずさった。
 
「アイツ…」
 
「もう敵じゃないから、ねっ?」
 
そうじゃない。
実はビアンキがずっと気になっていたのは、そのランチアだったのだ。
 
あの戦いでは、散々にやられた。
みんな怪我を負った。
たとえ六道骸に操られていたとしても、やっぱり許せない。
 
リング戦ではツナ達のピンチに助けてくれたのも聞いた。
ちょくちょくここへ来てはチビっ子達と遊んでいるのも知っている。
そう、問題はそれだ。
 
あろうことかビアンキは、チビっ子達と戯れるランチアに惚れてしまったのだった。
 
 
 
 
「邪魔をする」
 
丁寧に土産まで持って、ランチアがやってきた。
 
「いらっしゃい!」
 
ツナが出迎え、ランボ達は土産を持って奈々の元へ走った。
おそらく今回の土産もお菓子だろう。
 
ランチアはいつも、チビっ子達が喜ぶようなものを持ってきてくれる。
もちろん、だから皆がランチアに懐いているという訳ではない。
本当に優しいのだ、彼は。
ツナでも相手にするのがうんざりする程のランボにも、優しい。
もちろん、ツナや奈々にも良く接してくれる。
 
 
「ランチアさん、いつもいつもすみません、チビ達の相手を……」
 
「いや、子供は割と好きなんだ」
 
きっと保育士でも向いているんだろうが、おそらくその強面でまず逃げられるだろう。
 
「でも、実はランボ達、今から母さんと出かけるみたいで…」
 
「そうか…残念だ。ではとりあえず、アルコバレーノへの用事を済ませるか」
 
「リボーン?」
 
そうだ、ランチアはただチビっ子達に会いに来た訳ではないのだ。
 
 
 
「リボーンならいないわよ」
 
「えっ?!」
 
振り向けば、ビアンキがドアの壁に寄りかかって立っていた。
 
 
「毒サソリ…」
 
「リボーン、さっき出かけてったわ」
 
「マジかよっ?!ランチアさん、どうしましょう……」
 
ツナがおろおろとするが、ランチアは笑って言った。
 
「特に急ぎでもないから問題ない」
 
「そうですか…」
 
安心した時、携帯の着信が鳴った。
ツナのポケットから聞こえる。
 
「あっ、山本からだ。ちょっと部屋で話してきます」
 
とりあえずビアンキがいるから大丈夫だろう。
彼女も、今ここで戦闘する程馬鹿ではない。
 
そして、居間にはランチアとビアンキだけが残った。
 
 
 
 
 
「「………………」」
 
沈黙が支配する。
それを破ったのは、意外にもビアンキだった。
 
「……ちょっと」
 
「なっ何だ?」
 
もう済んだとはいえ、ランチアから骸戦の罪が消える事はない。
彼女を傷つけたのも脳裏に刻まれている。
女性だろうが子供だろうが、容赦なく攻撃した。
目の前にいるビアンキが自分を恨まない訳がない。
 
 
「……貴方…」
 
 
「………………」
 
 
「子供が、好きなの?」
 
 
「…………は?」
 
思わずそう聞き返してしまった。
てっきり、あの時の事を責められるかと思っていたからだ。
 
ランチアは慌てて我に返ると、なんとか言葉を絞り出した。
 
「こ、子供は…好きだ」
 
「そう……」
 
そしてまた沈黙。
だが今度は、ランチアが先に口を開いた。
 
「あの時は……本当にすまなかった…」
 
ずっとずっと謝りたかった。
でもタイミングがわからなかった。
いつもいつも彼女に見られていたのは知っていた。
恨まれている…そう思うと、声をかける事さえ出来なかった。
 
ビアンキは一旦目を瞑ると、穏やかな顔で目を開ける。
その顔はもう、何もかもを許した表情だった。
 
 
「貴方の事を、もっと知りたいの」
 
「俺の…?」
 
「そう」
 
驚くランチアをよそに、ビアンキは話を続ける。
だってしょうがない。
惚れてしまったんだから……。
 
 
 
 
ちょうどそこへ、階段を下りる音が聞こえてきた。
ツナだ。
 
「ごめんっ、急用出来ちゃって……ランチアさん、本当にすみません」
 
それに応えたのは、言われた本人ではなくビアンキだった。
 
「いいのよツナ。こっちは心配しないで」
 
「そ、そう…?」
 
ランチアを見れば、心なしか緊張が解けたように感じる。
ビアンキも機嫌がいいみたいだしきっと大丈夫だろうと、ツナは少し心配しながらも出かけたのだった。
 
 
 
 
 
時計の針は正午を越えている。
ビアンキはエプロンをつけ始めた。
 
「な、何をしている…?」
 
「昼食よ。お腹空いたでしょう?」
 
「い、いや……」
 
ランチアは一気に青ざめる。
彼女のポイズンクッキングはかなり有名だった。
実際見ているし。
そしてそれを自分でコントロール出来ないと聞いた。
つまり作る料理全てが………。
 
 
「食べる、わよね?」
 
笑顔でそう言われ、「はい…」という以外に何が出来ただろう。
 
次の日、ランチアが腹痛に悩まされたのは言うまでもない。
 
 
 
 
 
 
 
―――――――――――――――
ビアンキ×ランチアでした。
う〜ん…難しいですっ。
 
2009.10.04移動
 
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