記念品小説

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「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
 
沈黙。
これはつらい。
とにかく何か話そうと思い、無難な質問をしてみた。
 
 
「えと・・・ザンザス・・・そのぅ、何でウチに・・・泊まりに・・・・・・」
 
するとギロリと睨まれた。
いや、きっと向こうは睨んでいるつもりはないのだろう。
リング戦以前にこれでもかという程浴びた殺気も、今は微塵も感じられない。
 
 
 
「・・・・・・知らん」
 
 
「・・・は?」
 
 
「だから知らん。だが、これが処分らしい」
 
 
「・・・はい?」
 
 
全然話がわからない。
処分といえばきっとリング戦で起きたいろんな事の処分だろう。
そしてこれというのはザンザスがここに泊まるという事。
・・・つまり、ザンザスの処分はウチに泊まる事・・・?
 
 
「・・・わけわかんない」
 
素直にそう言うしかなかった。
話の内容はわかったが、何故処分がコレなのかがわからない。
 
「俺もわからん」
 
 
ザンザス曰く、怪我が癒えた頃、何もわからずにただここに泊まれと言われたらしい。それがおまえの処分だと。
 
 
 
 
「と・・・とりあえず、たぶん泊まらなくちゃいけないっぽい事になってるらしいから、こんな狭い家だけど、1日くらい我慢してください・・・・・・」
 
どうか暴れたり俺を殺そうとしないでください・・・。
いつその瞳に殺気が宿るかもわからない。
 
 
するとザンザスは懐からある紙を取り出した。
そしてそれを俺の前に差し出す。
不思議に思いながらもそれを受け取ると、日本語で何か書かれていた。
 
 
「処分だからコレに従えと言われた。だが漢字が読めん。おまえ読め」
 
「はい・・・。いっぱいあるなぁ・・・えっとぉ・・・」
 
俺はそのまま声に出して読んだ。
 
 
 
「ザンザスが沢田家に1泊するにあたっての決まり事。まず、絶対に沢田奈々に危害を加えない事。それから沢田家にいる居候達にも手をあげない事。というか暴れない事。そして基本的に頼まれたりした事には従う事。あとは沢田綱吉の部屋で寝る事。寝る時は2人でベッドで寝る事。沢田綱吉の宿題を手伝ってもいいが代わりにやらない事。きちんと挨拶をしてから帰ってくる事。以上を守らなければまた新たに処分を検討する。・・・だって」
 
 
一気に長文を読み終えて、ふぅ・・・と一息つくツナ。
そしてただ文字を追って声に出していただけなので、改めてその文を読み返してみる。
 
 
 
「え〜っと・・・・・・って、はぁぁ??!!何コレ??!!」
 
てか絶対これ父さんが決めたんだ!!てか俺の安否は?!俺に危害加えないとか書いてないし!!
 
 
ザンザスを見れば、目を見開いて固まっていた。
こんな顔もするんだなぁ〜とつい見入ってしまう。
 
てかつっこむ所は寝る時だよね?!
何でベッドで一緒に?!
 
 
 
と、手紙の下の方に「P.S.」と続いていた。
 
「えっと・・・P.S.・・・ザンザスは金持ちの生活しかしらないから、庶民の生活を教えてやってくれ、ツナ。狭いベッドで寝るのはその第一歩だ。・・・」
 
 
って、納得出来るかぁぁ!!!!
 
 
 
 
 
と、ザンザスが立ち上がってベッドに座った。
布団をポフポフと叩いたりベッドをギシギシ揺らしてみたりしている。
そんな彼の行動が、なんだか可愛く見えた。
 
 
 
「プッ・・・」
 
「あぁ?」
 
思わず吹き出してしまった。
 
 
「あああの、別に、ザンザス・・・を笑ったわけじゃなくてですね、そのっ・・・あの・・・えっと・・・こんな狭いベッドで寝られますか・・・?」
 
って、話題変えて話そらしてるだけだし!!
 
 
 
「・・・寝れる」
 
「あ・・・そうですか・・・」
 
てか、あれ?俺も一緒に寝るんだよね?どうすんだろう・・・このスペースだとくっつかないと寝られない気がするんだけど・・・。
 
 
 
 
 
そんなこんなで、夕飯もつつがなく終え、風呂にも入り(ザンザスはシャワーだけのようだったが)、とうとう寝る時間になってしまった。
 
しかも、こんな時に限ってリボーンは母さんの部屋で寝ると言って部屋を出て行ってしまった。
 
 
 
「・・・えと・・・寝ますか・・・?あの、もし狭いようなら俺下に布団引いて寝ますけど・・・・・・」
 
というかそうさせてください是非。
 
 
「手紙には2人でここで寝ろとあるんだろ」
 
「はぁ・・・」
 
「じゃあ寝るぞ」
 
・・・意外だ。絶対ザンザスの方が嫌がるかと思ってたのに・・・。
 
 
 
 
そしてザンザスが壁側にまず寝転がり、俺がその後におずおずとお邪魔する。
 
今は秋といってももうすぐ冬という季節。
ストーブもエアコンもないこの部屋は結構寒かった。
 
 
布団をちゃんと敷いて電気を消す。
そして、なるべくザンザスに触れないようにベッドから落ちるギリギリに寝る。
するとザンザスの腕が身体に巻きつき、彼に引き寄せられた。
 
 
「ちょっ・・・ザンザス?!」
 
なになに何事??!!
 
「・・・やっぱり」
 
「へ?」
 
「暖かい」
 
「・・・・・・」
 
 
その時の俺の驚きといったらない。
人肌を感じて「暖かい」なんて、彼からは想像がつかなかった。
 
 
でも、ふと思った。
ザンザスは、今までこんな風に誰かと同じ布団で寝た事があったのだろうか・・・。
赤ん坊の時はあったかもしれないが、物心ついてからは・・・どうなのだろう。
いや、きっとない気がする。
常に上だけを見てきた男。
温もりなどに浸っている暇はなかっただろう。
 
 
 
 
 
「・・・あ」
 
「あ?」
 
「あ、いや・・・えと・・・なんか俺、抱き枕みたいだなぁって」
 
「抱き枕?」
 
「あ、知らない?えっと・・・寝る時に抱く枕・・・て、そのままだけど・・・」
 
他に説明のしようがない。
 
すると頭の上からクックッと笑う声が聴こえてきた。
 
 
・・・ザンザスが笑ってる――――――っ!!!!
 
え・・・俺、なんかおかしな事言った??!!
 
 
 
「確かに・・・そうだな」
 
ザンザスがそう言ったと同時に、さらに強く抱きしめられた。
 
そして、すぐに規則的な寝息が聞こえてくる。
 
 
も・・・もしかして・・・寝た・・・?
 
 
 
もぞもぞと動こうとするが、動かない。
寝ているはずなのに、がっちり身体を抱きしめられていて身動きが取れない。
 
なんだか、父さん達があんな決まりを押しつけたのがわかった気がした。
 
これは俺の勝手な予想だけど、きっとこれは処分という名の更生なんじゃないかと思う。
今まで人の温もりを知らなかった彼に、それを教えてやってくれ・・・と。
それにしてもこっちの迷惑も考えなかったのだろうか・・・。
まぁ、迷惑・・・でもないけど。
一応優しいといえば優しいし、さっきちょっと可愛いとか思っちゃったし・・・・・・・。
 
・・・って、何考えてんの俺っ?!
 
 
もういいや・・・俺も寝よう・・・。
考えてもしょうがないし。
とりあえず、この季節だというのに肌寒さだけはなかった。
 
 
 
 
 
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