記念品小説

□女の子×男の子
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ピンスク
 
 
 
チュドーンッ
 
 
また、ランボの周囲で煙が発生した。
 
ツナはもはや呆れた表情しか出来ない。
もちろん煙の正体は10年バズーカ。
 
だが、煙の外には泣いているランボの姿が。
どうやら転んで10年バズーカを発射させてしまったらしい。
という事は、煙の中にはさっきまでランボと一緒に遊んでいた………
 
 
「あれ…?沢田さん……?」
 
きょとんとした顔で煙から姿を現したのは、10年後イーピンだった。
 
 
 
「っかしーな…さっきまでは…」
 
「あ、あの、イーピン…?」
 
「あれ、沢田さんが心なしか小さく見えるような気が…気のせい?」
 
「気のせいじゃないよっ!ってか10年あってどんだけ成長してないんだ俺っ」
 
ただ5分たてば元に戻る。
それまでは我慢してもらうしかないだろう。
 
「あ、もしかして10年バズーカですか?」
 
「えっ?!」
 
驚きだ。
イーピンが10年バズーカを知っているなんて…。
だがそうなら話は早い。
 
「ごめんねイーピン、そうなんだ…。でも5分たてば元に戻ると思うからっ」
 
「やだなー、沢田さんは悪くないですよー」
 
相変わらず可愛い笑顔でそう言うイーピン。
だがふと、「あっ」と何かを思い出したように手を打った。
 
「沢田さん、ヴァリアーへの連絡って今すぐ出来ます?」
 
「ヴァ、ヴァリアー?!どうして?!」
 
「どうしても会いたい人がいて…」
 
だがあいにく、ツナはヴァリアーと連絡を取る手段など持っていなかった。
もしあっても怖くて連絡などしたくないが。
 
 
「出来るぞ」
 
「リボーン!」
 
突然出てきたリボーンは自分の携帯電話を取り出す。
 
「おい、誰と会いてーんだ?」
 
するとイーピンは嬉しそうにこう言った。
 
 
「スクアーロ!!」
 
 
 
 
 
 
ツナの驚きも無視し、リボーンは電話をかけ始めた。
 
「……お、スクアーロか。今どこにいんだ?…日本?並盛か?………チッ、使えねー。……そうか、わかった」
 
「リボーン?何だって…?」
 
「今ちょうど日本にいるそうだが、並盛じゃねーらしい」
 
「そっか…じゃあ5分じゃ………ん?」
 
そこでツナは気づく。
これ、とっくに5分以上たってるんじゃ…?
 
イーピンもそれに気づいたようだった。
 
「もしかして…10年バズーカの故障ですか…?」
 
慌てて転がっている10年バズーカを確認すれば、見事にヒビが入っていた。
ランボが転んで落とした時のものだろう。
 
戻れないかもしれないというのに、イーピンはツナより落ち着いていた。
それどころか…
 
「それじゃ、時間はまだあるんですね?」
 
などと嬉しそうだ。
そしてリボーンに、スクアーロにここへ来るよう説得を頼んだ。
 
「…スクアーロ、今すぐ沢田家に来い、場所はわかるな。…あ?何でだと?んなのおまえに会いたがってる奴がいるからに決まってんだろ。…忙しいだと?」
 
そこへイーピンがジェスチャーで電話を自分に代わってくれとリボーンに伝える。
自分で話をつけるようだ。
 
だが、ツナにはイーピンが何故スクアーロに会いたいのか検討もつかなかった。
そもそも敵だったし、覚えていないかもしれないがイーピンだって同じヴァリアーのレヴィの部隊に襲われて怪我を負っている。
直接スクアーロとの面識もないはずだ。
 
イーピンは携帯電話を取ると、話し出した。
 
 
「もしもし」
 
『あ"?テメェ、誰だぁ』
 
「誰でもいいわ、どうせ今の貴方にはわからないだろうし。それより、今から沢田家に来て」
 
『はあ"?!何で俺がテメェに指図されなきゃなんねぇんだぁ!』
 
「私が会いたいって言ってんの、早く来て」
 
『そこまで30分はかかるんだぞぉ?!』
 
「そんなの関係ないわよ。来なきゃ、10年後の貴方がどうなっても知らないわよ?」
 
『じゅ、10年後の俺だぁ?』
 
「私は10年後の貴方を知ってるの」
 
『はあ"ぁ?!……とにかく、俺は忙しいんだぁ』
 
「どうせあの我が侭暴君ボスにくだらない用事でも命令されたんでしょ?酒買って来いだの何だのって」
 
『……………』
 
携帯電話の向こう側のスクアーロは思わず息を詰まらせる。
その手には紙袋が。
そう、彼は日本での任務のついでに、最近日本酒にハマっているザンザスから言われて、日本酒で有名な店を訪ねていたところだったのだ。
取り寄せても良かったのだが、どうせ日本に来たのだからと自分の足で出向いたまでの事。
まさかここまで正確に当てられるとは思ってもいなかった。
…電話の相手は、明らかに自分の事をよく知っている。
となれば、例え10年後の自分でも少し心配になってきた。
 
 
『……今から向かうが、30分はかかるぞぉ』
 
「20分で来なさい」
 
『無茶言うなぁ!』
 
「…しょうがないわね、じゃあ25分。それじゃ」
 
プツ
 
プー、プー、プー……
 
 
「……………」
 
本当に切れた。
スクアーロはしばらく携帯電話を見つめていたが、25分と言われたのを思い返して慌てて沢田家に向かうのだった。
 
 
 
 
 
一方で、ツナはもはや何も言えなくなっていた。
イーピンがスクアーロ相手にまさかここまで強引だとは思わなかったからだ。
リボーンも少し驚いている。
 
イーピンは何事もなかったかのようにリボーンに携帯電話を返すと、いつものあの無邪気な笑顔で「何固まってるんですか、沢田さん〜」などとケラケラ笑っていた。
 
 
 
 
25分後。
 
「邪魔するぜぇ!!」
 
約束通り、スクアーロが窓から入ってきた。
……まぁ、素直に玄関から入ってくるとは思ってなかったが。
 
 
「誰だぁ?俺を呼んだのはぁ!」
 
「私よ」
 
イーピンが躊躇いなく前に出た。
 
スクアーロは目を見開く。
女だという事は声でわかっていたが、目の前の黒髪の少女はどう見ても10代…いって後半だろう。
 
「テメェ、誰だぁ?」
 
「そんな事どうでもいいのよ。言わない方が都合がいいしね。……それより…」
 
「……?」
 
じりじりと近づくイーピンに警戒するスクアーロ。
 
だが次の瞬間、抱きつかれた。
 
 
「………はあ"ぁ"っ??!!」
 
周囲も唖然。
そんな中、イーピンのみが幸せそうだった。
 
「あ〜っ、10年前のスク!やっぱり可愛いわぁ〜!それに若い!でも基本のへタレは変わらないようねっ」
 
「っ????」
 
剣を抜く暇もなかったスクアーロは、もはやされるがままだった。
 
イーピンはさらにスクアーロのその長い銀髪を手に取ると、愛しそうに撫でた。
 
「相変わらず綺麗ねー。でもこっちの方が艶がいいかしら?まぁしょうがないか」
 
それはつまり、10年後のスクアーロの髪をよく知っているという事。
ますます謎が深まった。
 
 
「おぉぉおおまえっ……な"っ……」
 
面白い程わたわたするスクアーロ。
頭が混乱して何がなんだかわからない様子だ。
 
ツナはやっと我に返ると、恐る恐るイーピンに話しかける。
 
「イーピン…?えっと…スクアーロとは知り合い…?」
 
「そうですっ」
 
「んな訳ねーだろぉ!」
 
正反対の答えが返ってきた。
 
 
 
それからもイーピンはスクアーロに触りまくり、しまいには裸を見たいと服まで脱がされそうになる始末。
何故か抵抗出来ないスクアーロ。
というよりは、驚きすぎて動けない状態のようだ。
 
そしてイーピンが覆い被さった時………煙が立ち込めた。
 
 
 
「な"っ…何だぁ?!」
 
身体の上の体重がなくなり、代わりに何か小さいものが乗っている気がする。
やっと煙が晴れると、5歳のイーピンが戻ってきていた。
 
「к£φ!」
 
イーピンはしばらくスクアーロの顔をじーっと見ていたが、すぐに笑顔で抱きつく。
もちろん、知らない子供にしがみつかれ、スクアーロはまたまた混乱していた。
 
とりあえず剥かれるのは回避できたようだが、これもこれでなんというか……
 
「とりあえず、髪は引っ張るなぁ!」
 
するとイーピンはビクッと止まり、泣きそうな顔で見上げる。
そしてしょぼんとうつむいた。
 
「あ"ー……」
 
周囲を見れば、幼い子供を怒鳴って泣かせた大人に非難の目が向けられていた。
スクアーロはため息をつくと、仕方なく見知らぬ子供の頭を撫でる。
といっても、どこからがおでこでどこからが頭なのか定かではないが。
そして言った。
 
「その…悪かったなぁ…」
 
撫でられたイーピンは真っ赤になり………ピンズがおでこに現れた。
 
「ヤバイッ!爆発する〜っ!」
 
ツナが慌ててイーピンを抱き上げ、窓の外に投げる。
 
「ちょっ…おまえ、何してんだぁ!」
 
スクアーロは焦って投げられたイーピンを守ろうと自分も窓から飛び……見事に爆発に巻き込まれた。
 
 
「これからが楽しみだな」
 
全てを把握したリボーンが、ニヤリと笑うのだった。
 
 
 
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