記念品小説
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「スクアーロ〜〜〜っ!!」
そう言って嬉しそうに抱きついてくる彼を、俺はただ見下ろす事しか出来なかった。
いや、落ち着け。
確か今日は久々に仕事もなくて、だから武の部屋でのんびりしてて、途中で携帯が鳴ったから部屋を出て・・・。
仕事の話だったが大して急ぐ事でもなかったので、一応話だけ聞いて切ったんだ。
そして部屋に戻ったら・・・・・・・・・
いきなり武が抱きついてきた。
「たた武ぃ?!どうしたぁ?!」
「ん?何がだ?」
見上げてくるその顔は、少し頬が紅く染まり瞳は濡れて輝いている。
それに一瞬見とれてしまうスクアーロだが、今はそれどころではない。
「・・・・・・武」
「ん?」
「酒飲んだのか?」
ていうか間違いない。
そういえば部屋を出る前に飲みかけの酒を置きっぱなしにしてきた。
きっとそれを飲んだのだろう。
それにしても・・・・・・
「そんなに飲んだのか?」
見たところ、そんなに減ってはいない。
「いや〜?ちょこっと飲んでみただけだぜ〜?へへっ、スクアーロ〜っ」
そう言ってさらにギュ〜っと抱きついてくる。
満面の笑みでそうしてくるもんだから、邪険にする事も出来ない。ていうかむしろ嬉しい。
ただ、ずっとこのままだと困る。
何が困るって、俺の理性が。
とりあえず水を持ってこようと動き出すが、離れない。
それでもこのままというわけにも行かず、結局スクアーロは山本を引きずったまま階段を降りて1階に向かうのだった。
「う”お”お”お”お”い、剛ぃ!!どーゆー事だぁコレはぁ!!」
1階につくなり、スクアーロはそう叫ぶ。
山本は相変わらず彼にひっついたまま上機嫌で笑っていた。
そんな2人を見て、店を閉めたばかりの剛は状況を察したのか豪快に笑った。
「こっりゃあ珍しい。スクアーロ、あんた武に酒飲ませたのか」
「コイツが勝手に飲んだんだぁ」
「そーかそーか。いやーホント久しぶりだなぁ、そんな状態の武を見んのも」
「・・・?」
聞く話によると、山本はかなり酒に弱いらしい。
何せ、小学生の時に飲んだ甘酒で酔っぱらってしまったのだ。
その時、酔ったら誰かれ構わず抱きつく癖を知ったらしい。
そんな話に、他の誰かもこんな風に抱きつかれたのかと少し嫉妬するスクアーロ。
だが、すぐ傍で嬉しそうに抱きついている山本を見ればそんな気も失せてしまう。
すると、剛が我が子に向かって両手を伸ばしてきた。
「さぁ武!!父ちゃんにも存分に甘えろぃ!!」
すると山本はそんな父親とスクアーロを交互に見つめ、一言こう言った。
「・・・ん〜・・・・・・俺、スクアーロがいい」
「「んなっ??!!」」
剛とスクアーロが同時に声をあげる。全く正反対の意味で。
山本はさらにスクアーロを抱きしめ、頬をすりすりと寄せてきた。
そして涙目上目使い、それにプラス上気した顔で懇願した。
「なぁスクアーロ・・・俺、喉渇いちまった」
「・・・・・・あ”・・・あ”ぁ”・・・」
我を失いかけたスクアーロだが、なんとか意識をしっかり保つ。
ここで本能のままに動いてしまっては、まさに自分は人でなしだ。
だがこんな状態の恋人を目の前に何もしないのも男がすたる。
とりあえず、ショックでまだ固まっている剛をその場に残し、水を持ってスクアーロは山本を引きずりながらまた2階へ向かったのだった。