☆NOVEL
□工藤君の看病。
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快斗が風邪をひいた。それはそれは見事な100人が100人とも見たら風邪だという状態だ。高熱でベットに寝込んでウンウン唸っている。ーー可哀想だが俺ができる事は側にいて看病してやる事位。
「ぅ〜……ぅう……くそ……関節いたい……しんいち〜」
「喜んで撫で……さすってやるけど?」
「前言……撤回。さわ、んなセクハラたんてー……」
「冗談だっつーの、腹減ってねぇか? お粥でも食うか?」
「…………まだ、死にたく……ない」
「……失礼だなオメーは。前に俺がダウンした時確かレトルト買い置きしといてくれたよな。待ってろ、温めて皿に入れて持ってくる位俺にだって出来る」
「………」
「何だよその沈黙。探偵ナメんな」
「……探偵の仕事じゃ……ねぇじゃん」
「いいから大船に乗ったつもりで安心して寝てろ」
「泥舟の、間違いじゃ、ねぇの?」
ーーホント、失礼だなオメーは。
***
「えーっと、お粥……お粥…………どこにあるんだ?」
自分の家だが普段家事を快斗に任せっきりの為何が何処にあるかさっぱり分からない。瀕死の快斗に聞くのもどうかと思うが何よりレトルトのお粥も準備できねーのかとか言われるのも癪だから何となく聞きたくない。
とにかく扉という扉、引出しを開けてみたら何とか目当てのモノが見つかった。
色々掘り起こしている為、モノが大散乱したが、後で片付ければいいだろう。
「ええっと? ……えーっと耐熱容器に入れ、レンジで、もしくは湯で……湯せん……」
ってか、んな面倒くせえ事しなくても中身を鍋にぶち込んであっためりゃそれが一番早ぇんじゃねぇのか? 何でわざわざ湯沸かしてとか……効率悪ぃ。できたら鍋ごと持ってけるし。
「てか……鍋どこだ? いや、さっき見たな。思い出せ何処で見たんだ……?」
記憶力は悪くない筈だが必要のない記憶は片っ端から消えるらしい。散乱した物達をぐるりと見回しゲンナリしながら一から捜索する事に決めた。
***
「おーい、出来たぞ快斗」
行儀が悪いと思いつつも両手がふさがってる為足で部屋の扉を開け、盆に入れた鍋を持って入る。快斗は相変わらず呼吸が荒く苦しそうだ。
「さっきまで、すげぇ音してたけど……」
「細かい事は気にすんな、いいから食えよ」
「…………ん? すくなく、ねぇ?」
「あー……あっためたら……減った」
「……黒く……ね?」
「そう見えなくもねぇな」
加減がわからず手っ取り早く温めようと強火にしたら見事に焦げた。
今回の騒動でわかったことは、俺には家事の才能は全くないという事だった。
快斗が居ないとレトルト粥の準備も出来ないのだと改めて思い知らされた。
「……悪りぃ、頑張ったつもりなんだけど。やっぱりなにか買ってく……ぉい!」
茶色……というか焦げて黒くなったお粥を抵抗なくパクリと口に運ぶ快斗を見て柄にもなく焦った。ただでさえ体調が悪いのにそんな物を口にしたら……
「ん、香ばしくてうまい。ありがと新一……すげー嬉しい」
お礼を言うのはコッチだ。その笑顔に俺がどれほど癒されるか、そのたびにどんどん好きになってるなんて。
悔しいから、絶対、ぜーったい言やらないけどな。
ーー早く元気になれよ、快斗。