小説2
□見舞
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「風邪なのに、食欲旺盛だな。」
「だってハンバーグ好きなんだもん!それに花井が来てくれたから、熱下がって元気出た!」
素直に嬉しいと感じた。これだけでも来て良かった。
「食べないのかー?顔緩んでんぞ!」
田島が俺の頭をペシペシと何度も叩く。笑ってやがる。やられっぱなしは好きじゃない。仕返しに田島の頭を一発叩く。すると、悪戯っ子みたいな顔で笑った。ドキッとした。こう言う表情に弱いんだよな。
「花井、お腹減ってないの?そんなんだったらハンバーグもーらい!」
田島の手が届かないように皿を横にやる。
「誰がやるっていったよ!大体風邪ひいてんだったらちっとは控えろ!」
田島に盗られないように俺も早く食べよう。
ハンバーグにナイフを入れると、その重さだけで、すっと切れた。そしてそれを口に含むとほろほろと崩れていく。
「おばさん、料理上手だな。」
「うん。うちのお母さん結構上手いんだよ!特にハンバーグは得意みたい。」
食べながら喋るので、口から零れ落ちている。
「あー、もうきたねーな。ちゃんと飲み込んでから喋れ。」
わかった、と返事をしたが、その返事のせいでまた零れる。こりゃ、おばさんも大変だな。
夕飯をご馳走になり、田島と喋っていると、あっという間に時間が過ぎた。
「俺、もうそろそろ帰るわ。」
「えー!もう帰っちゃうのー?」
「明日も部活あるからな。」
「じゃあ、今晩泊まっていきなよ!うちからは学校近いからゆっくり寝られるよ!」
「いや、遠慮しとくよ。着替えねーし。それにおばさんにこれ以上迷惑かけられねーからな。」
田島は淋しそうな顔をしている。
「泊まるのは、また今度な。」
そう言って田島の頭をクシャクシャと撫でた。すると、渋々了解した。
おばさんにお礼を言って、玄関を出ると、外は真っ暗だった。
「今日は晩飯ご馳走になっちまった。ありがとな。」
「うん。また来てよ!」
「あぁ、じゃあな。」
自転車に跨がろうとすると、突然呼び止められた。振り向くと頬に温かいものが触れる。
「お見舞いに来てくれたお礼。」
そして田島は、「また明日な」と付け加えて家に入って言った。頬が緩む。緩み過ぎて落ちてしまいそうだ。明日は俺からしてやろう!!
END
後書き
落ちのない文をたらたらと続けてしまい、すみませんでした。しかも、勝手に田島の母親は料理が上手く、ハンバーグが得意、という設定にしてしまいました。粗末なものばかりですが、またの来訪をお待ちしております。