▽short2

□浦島太郎な君と、亀の私
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教室の隅で一人ぽつんと本を読む私。

仲の良かった筈の友達はみんな私を時々見ながら話している。

「………」

少し前に誤解を招いた私は、今ではクラスの嫌われ者だ。

どうしてこうなったんだか‥。

あ、次の授業は移動教室だっけ。

いつも最後になるかならないかで私は教室を移動している。

机の上に授業の支度をして、人が少なくなるのを静かに待った。



数分すると人も殆どいなくなる。

今日は私が最後かな。

そう思いながら立ち上がると教室に誰かが飛び込んできた。

「あぶねーあぶねー!忘れもんっ」

「………」

野球部の田島くん、だっけ。

「あ、まだいたのか?早くしねぇと遅刻するぞっ」

「え‥」

「どした?」

私に話しかけてくる人が、まだいたんだ。

「…お前さ、悪いことしてねぇんだろ?」

「………」

「何で正直に言わねーの?」

「誰も‥、信じないよ」

「…本当にそー思う?」

「うん」

「………」

「………」

田島くんは溜め息をつき私の手をとった。

「!」

「ほら行くぞ、遅れちまう!」

「は、放して…っ」

「やだ。これから俺はお前の誤解を解くんだっ」

「無理だよそんなの!」

「やってみねぇと分かんねぇよ!」

「……もう…っ」

諦めた、と同時に私は彼に希望を持った。


田島くんて優しいんだ。










浦島太郎な君と、亀の私


(お礼なんて何もしないよ?)

‐‐‐‐
2010年12月の拍手小説でした/(^O^)\

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