▽short2

□水面に浮かんでみる
1ページ/1ページ



とある夏の話。

幼馴染みに誘われて市民プールに行ったけど、まさか二人きりだなんて思わなかった俺は少し戸惑っていた。

「文貴ー!」

ウォータースライダーに行こうとはしゃぐこいつを見て溜め息をつく。

「元気だなぁ」

「だって久しぶりに二人きりで遊べるんだよ?楽しまなきゃ!」

「でも何でプール?」

「金欠なんだもん」

「………」

市民プールは無料だもんな。

それから俺達は緩いウォータースライダーを滑って、プールサイドに座り足だけを浸けた。

「文貴、好きな子がいるの?」

「ななななんだよいきなり」

「‥いるんだ」

ぴちゃぴちゃと足で水を軽く蹴りながら言った。

「ねぇ、どんな子?」

「え…」

「かわいい?いい子?っていうか誰?」

「な、7組の子‥」

足をとめて考え出す幼馴染みを見ていると何だか面白くなってきた。

「…文貴、私は?」

「え?」

「私は恋愛対象外??」

「お前、栄口の事が好きなんだろ?」

いつも一緒にいるし。

すげぇ嬉しそうに笑ってるし。

「文貴のバカっ」

「ぅぇえ!!?」

突然立ち上がった幼馴染みは俺をプールに落とした。

バカ、ってなんだよ。

「っ何す…!」

水面に顔を出してあいつを怒ろうと思ったけど、

「…あれ?」

あいつは何処にもいなかった。

「………」

しばらく俺は水面に浮かんで幼馴染みが怒った理由を考えようと思う。















水面に浮かんでみる

(栄口君には相談にのってもらってただけなのに…)






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ