novel
□reliance
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「1番は『ここ』、でしょ?」
「馬鹿言ってるなよ」
そう言ってレイヴンは長い黒髪を愛しそうに撫でる。
温かく優しいその仕草は子を愛でる親のようにも見える。
ユーリはくすぐったそうに少し身をよじりはしたものの、好きにさせることにした。
普段はベタベタと抱き着きたがられると欝陶しいとしか感じないのだけれど、今は不思議と嫌ではない。
それに気を良くしたレイヴンは手を髪から頬へ滑らせる。
「なぁに青年、今日はご機嫌が宜しいの?」
「別に。たまには悪くないかなって思っただけだよ」
「そんなこと言っちゃうと…おっさん、何するか分からないわよ?」
普段は見せない大人の男の顔で言うと指でそっと唇をなぞる。
ユーリはその指を舌先で舐めると目を細めてまだ昼間だろ、と見詰め返した。
口では咎めていても抵抗する様子は全くない。それは合意しているのだということで。
軽く触れるだけの口付けを交わすとじゃれるようにベッドに倒れ込んだ。
こじんまりした部屋で言葉にならない想いを重ね合おう。
互い以外のものはいらない。
今、この空間にあるものだけで全てが満たされているから。
何かに依存することを恐れてた
それは弱さに繋がると思っていたから
失う日を想像すると
眠ることもできなかった
その意識が変わった
変えてくれたと言うべきか
確かな信頼から生まれる絆が
不安を打ち砕く
安心して身を任せられる
守り護られる関係
稀にこんな風に思える相手がいるってのも
悪い気はしないでしょ