novel

□Suite Trap
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「女の子の手料理は大切にしたい。俺は紳士だから!」
「で、貰ったは良いけど?」
「…甘味は、駄目なのよ」

そう言ってガックリと肩を落とす。
良いカッコしようとするからだ、と言いながらユーリは一つを摘み口へ運ぶ。

「…青年、どうよ?」
「食えば分かるだろうよ」
「意地悪…」

唇を尖らせて文句を呟く姿は歳相応には見えない。
聞いたところで何かが変わる訳でもあるまいしと思いながらユーリはもう一つ頬張る。
この男が甘味類が苦手なのに受け取ったのはただ女性が好きだからではないことを彼は知っていた。
彼女に悪意は一切なく、仲間を思いやっての贈り物なのだ。
だからその気持ちを受け取りたかっいと純粋に思って受け取った。
とは言え、食べれもしないのに受け取るのはどうかとも思う。

「甘さは控え目ってとこだな」
「控えても甘いんでしょ…?」

レイヴンは眉をハの字にしてうなだれた。
折角の好意を無下にするのは気が進まない。
ここはやはり、無理をしてでも食べるべきなのうだろうかと考えあぐねる
。真顔で唸りながら悩む横でユーリは何度目か分からない溜め息を吐く。
このままでは一日中ずっと睨めっこを続けそうなおっさんを何とかすべきだろう。
少し頭を捻って考えてみる。
そして包みに手を伸ばした。

「そのまま全部食べちゃってくれない?」
「貰った本人なら一つくらい食っておけよ」
「わーっ待って待って!無理矢理はイヤ…?」

肩を掴まれたレイヴンはギャーギャー喚きながら首を振った。
しかし、予想に反してユーリは手にしたクッキーを自分の口へと運ぶ。
押し込まれはしなかったもののその先が読めない。
警戒しながら見守ると甘い塊を唇に挟むようにしてくわえた。
そうして空いた手はスルリとレイヴンの首に回される。

「ん。」
「な、何?」
「ふえ」
「…『食え』?」
「ん」

唇を動かせないので上手く喋れないらしい。
目線と展開で言いたいことは理解できるのだが…
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