novel
□Suite Trap
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テーブルに顎を乗せてしかめっ面。
そうしてかれこれ10分程経つ。
レイヴンは低い唸り声を漏らし続けている。
「おっさん、いい加減欝陶しいぞ」
「ワフッ」
ユーリが指摘すると同意するようにラピードも吠える。
「だってよぉ〜」
姿勢はそのままに目だけを動かす。
口調こそ普段通りなのだが、その表情はいつになく苦渋が見て取れる。
ベッドに腰掛けていたユーリは深い溜め息を吐くとテーブルの傍へ向かう。
「嫌なら貰わなきゃ良かったじゃねぇか」
「ぅう〜…」
二人はわいらしい包みに視線を落とす。
そこにはレイヴンにとって凶悪なものがあった。
甘く香ばしい香りを振り撒く焼き菓子。
先程エステルに手渡された彼女お手製のものだ。
箱入りお姫様の料理がどれ程の威力を誇るかは仲間内で知らぬ者はいない。
しかし今回はリタとジュディスにも手伝ってもらったらしい。
味に問題はないだろう。
そう思ってもレイヴンは手を付けようとしない。