novel

□敗北から始まる
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人生長く生きてりゃいろいろあるワケで

経験がそれなりに豊富だったりすると

何ものにも囚われたりはしないのさ

そう、おっさんは凄いのよ!



「退屈だわねー」

レイヴンは椅子に逆向きで座って足をバタつかせていた。
その様子はまるで駄々を捏る子供のようで、とても三十路を越えたおやじの取る態度ではないのだが、咎める声はない。
室内にいるのはレイヴンとユーリの二人だけで、あとのメンバーは買い出しと情報収集に出掛けている。
いつもなら何か言ってくるであろうユーリも相手をするのが面倒なのか、開かれた窓枠に腰掛けて外を眺めている。

「ねー、青年もそう思うでしょー?」

必然的に背を向けられている上に無視までされてしまって、レイヴンは少し拗ねかけている。
「シカトとか酷いじゃないの」と呟きながらまた椅子を揺らす。
ちなみにロッキングチェアーなどではなく普通の椅子なのでガタガタと音を立てている。
無作法極まりないのだがお咎めもないのでそのまま前後に揺れ続ける
。振り子のようにカッタン、カッタン、と。
レイヴンとしては「煩い」とか「大人しくできないのか」とか、何でも良いから会話に繋げたいだけなのだが、
ユーリは知ってか知らずか黙ったまま。
振り向こうともしない。

何か、おっさん苛々してきちゃったわ
何か言ってくれるまで揺すっててやる!
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