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□なんて無邪気な喜劇だろう!
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そんな真っ暗な部屋の中。
子供が一人立っていた。
ただ一人だけ、立っていた。

手には冷たいナイフの感触。
身体には咽る程浴びた真っ赤な鉄の臭いの液体。



気分が良い。

心地が良い。

あぁ、これが自由

あぁ、これが不羈

なんて甘美なのだろう!



嬉しそうに無邪気に笑い、外へと駆け出す。
空にはポッテリとした鈍重な光を放つ月。
周りには朱"で飾られ輝く庭園。
噴水も、城も朱"一色!



その朱"の中に、子供が独り立っていた。
ただ独りだけ立っていた。











そんな真っ暗な闇の中。
人が一人立っていた。
ただ一人だけ、立っていた。

手には冷たく光る剣の刃。
銀髪に、真っ黒な姿で辺りを見渡している。



気分が悪い。

心地が悪い。



面倒臭そうに溜め息ついて、歩調を速める。
空にはポッテリとした鈍重な光を放つ月。
周りには死体"で飾られ輝く庭園。
噴水も、城も死体"一色!



その死体"の中に、子供が独り立っていた。
ただ独りだけ立っていた。










銀の人…青年が近づいた。
同時に子供はそちらを振りかえった。


「…う゛お゛ぃ、」

「こんばんわ、殺し屋さん」


微笑む少年。
血が固まってしまっているが、綺麗な金髪。
そして頭には小さなティアラ。

青年は一瞬で全て察した。
(あぁ、この幼子がやったのか…)と。


「何の用で来たの?」

「…秘密だぁ」


言う必要も無くなった。
今回は上からの指令で、【この城自体を抹殺し、消せ】との事だったからだ。
もうこの城に人は居ない。
反対に、自分が手を下さずとも、すでに地獄と化している。
恐らく目の前に立つのはこの城の子息辺りだろう。
声に出さずに頭の中に言葉を浮かべる。


(後はこのガキだけか)

「ふぅん」


そう考えると同時に子供の声を上がる。
興味無さそうに、手に持つナイフに付着する血を洋服で拭っていた。


「あ、ねぇねぇ。王子の話聞いてくれる?」


ふと手元から顔を離し、磨くのをやめると満面の笑みで見つめてくる。
これだけならただの子供にすぎない。


「あ゛ぁ?何だ言ってみろ」

「うししっ。王子はね、ついにやっと…やっと、自由になったんだよ!」

「…………」


声を出してたからかに笑う子供。
銀の人にはそれが滑稽な喜劇にしか見えなかった。





そいつは違うぜ、ガキぃ。



テメェが手に入れたのは俺達暗殺者と同じ、










―…孤独だぁ。





















んて無邪気喜劇ろう




(…子供の浅墓さ故なのか…)

(…あるいは子供らしい考え故なのか…)

(……はぁ、考えんのも馬鹿らしいぜぇ…)




その夜。
少年と青年は共に闇の中へと消えた…














-END-

2人が出会った頃を少し暗めな方向で展開していった所、大変なことになってしまいましたΣ←

この次はちゃんと甘めの出会い模様を追っていきたいです。



(20080829)藍原時雨










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