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□重なる影
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まさかとは思ったけどね。
多分ソイツが言ってた双子っつうのは俺と、死んだ兄さんの事なんだろうね。うししっ

気分悪くなって部屋に帰ってきたら、そのままベッドにばったりさ。
血でベッタベタだったけど、シャワー浴びるのも嫌だった。

そんな事よりも、スクアーロに会いたい気分だ。


「スクアーロ…」


呟いた時だった、部屋の扉が開いたんだよ。

―…ゆっくりと、静かに。

鮫が寂しくなって会いに来たのかと思ってみたら違った。





兄さんだ。





すぐそこで、笑って俺を見下ろしてる。





笑うな、その顔で。





喋るな、その口で。





見るな、その瞳で。





だなんて事は百も承知さ。





でも…





ズッタズタにしてやりたくなった。





目の前から消してしまいたいのだ。
俺はフラフラと立ちあがり兄さんへ近寄る。
兄さんはニコニコとしていたが、血まみれの俺を見て顔色を変えた。

何か言っている。

口元が動いていて、それだけは分かった。

でも…声なんて聞こえなかった。

だって…俺の妄想産物だろ?


「…………」


スッと首に両手を回してやった。
そしてゆっくりと力を入れていく。
当然兄さんの顔は苦しそうに歪み自分の手で、俺の手を剥がそうと指を掴んでくる。

何か叫んだ。

けど…そのまま両手で思いっきり握って…締めた


『……っ……』


―…ボキリ…


鈍く骨の折れる音が、腕に伝わってくる。

最後は呟くように兄さんんは何か言っていたけど、ダルそうに…力なく手の中の首が垂れた。


「…ははは…」


ボーっとする意識の中、喉から笑い声が漏れる。
ゆっくりと自分の手中のそれを見ると、頭が…顔が兄さんじゃなかった。

苦しそうに目を見開いて死んでいるのは、紛れも無い…スクアーロだったんだ。


「………っ…」ガタガタッ










途端、上がる叫喚










部屋中に響き渡る悲鳴















あぁ…これは悪夢か…




















重なる影



(兄さんの影か…スクアーロの影か…)

(俺の手の中にあるのは、お前の…)
















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