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□求めるは父の影
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 翌朝、関所を北へ向かおうとする一行を引き止めたのは関所付の憲兵だった。未明に『紅き風』の構成員と思われる人物が目撃されたというのである。
「ガーネットで目撃された集団と同じ装束の男が、北側からこちらの様子を伺っていたので…おそらく」
 斧を担ぎ、バンダナを巻いた2mはあろうかという大柄な男だったらしい。声をかけたところ、何も言わずに森へ入ったという。
「それが『紅き風』の者なら、森で待ち伏せしている可能性があります。ここは僕が様子を見て安全が確認されてから進んだほうがいいと思います」
「待てよ、相手が一人だと決まったまけじゃないだろう?」
 関所に見張りがいるかも、そこで離れ離れになれば別働隊に襲撃をうけるかもしれない。相手の力量もわからないまま、単独行動をするべきではない、というのがカインの意見だった。
「じゃあどうするんですか?」
「5人でまとまってるしかないだろう。人数がいたほうが援護もできるしな」

 結局アレンの意見は却下され、まとまって進むことになった。森を抜けると、草原が広がり、遠くにはアルバートの水源のひとつであるエルミオ湖がある。その周辺は緩やかな高地になっており、湖から湧き出る水が川となり、大地を潤している。
 ちょうど街道の先に街が見えた頃、同時に辺りに殺気が漂いはじめた。
「来たか…!」
 空気を裂くような黒い風が、地面に突き刺さる。それが再び地を離れたとき、その殺気の持ち主の足はアレンが発動させた魔法の『土の手』により押さえつけられていた。
「うおおっ!」
「何だと…!?」
 しかし次の瞬間、その足元の土を斧で割ると、その手も形を失い崩れていく。
「ダメかっ!」
「なめるな、小僧ッ!」
 アレンの胸倉をつかむと、片手で彼を持ち上げ、近くの木に向け投げつける。
「うあぁっ!」
「アレンっ!」
 衝撃で気を失ったのか、その場からアレンはピクリとも動かない。一同に焦りの色が出る。
「フン、クレアス様の仰るとおりだな。あの魔道士をつぶせばお前らの戦力は半減!いや、それ以下だなッ!」
 アレンに駆け寄るセレスに、斧を振りかぶる男。刃がその身を引き裂こうとしたその一瞬前、聞きなれない音が響き渡った。
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