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□風の吹く場所
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「僕のお父さんを探してほしいんです」
少年の名はウィルと言った。12歳で、父親と二人暮し、母親は病気で亡くなったらしい。
聞けば、街の近くにある鉱山に出かけたまま2日戻らないという。
「あの鉱山の近く、山賊が出るって街の人が言ってたんだ。だから…」
ウィルは今にも泣きそうである。
「冒険者の中で強そうな人が、ここの宿屋にいるって…それで」
「ああ、わかったわかった。泣くなよ、ボウズ…」
カインがなんとかなだめるが、その甲斐むなしく、ワンワンと泣き出してしまった。
「どうする?金にはならなそうだぞ」
カインがアレンに告げる。なんてったって相手は子供だ。父親が無事見付かればそれが一番いい。しかし、最悪の場合は…。元々お金を稼ぐ為に冒険者となったのである。しかし。
「なぁ…」
セレスが何か言いかけた瞬間、周囲の3人は黙ってため息をついた。
「わかってます。引き受けましょう」
「子供の頼みを断ったとあっちゃ、王子の名前に傷がつきますからね」
「王子?」
「いや、こっちの話だ」
首をかしげるウィルに、カインが慌ててシーっと指を口に当てる。
「それじゃ、僕は街の人に鉱山のことを聞いてみます」
早速とばかりに宿を出て行くアレン。カインはウィルに話を聞こうと泣き止むのを待っていた。
「セレス様、もし…もしもですよ。あの子のお父様が見付からなかったら…」
「ああ。考えたくはないけどね。最悪の結果はさけたいよなぁ」
レイチェルの言葉に、セレスの顔が曇る。他に親戚もいないようだから、一人きりになってしまうのだ。
夕方になってアレンが戻ってくると、食堂に移動して作戦会議となった。
「あまりいい話は聞きませんね。金が出なくなってからはほとんど人が寄り付かなくなったとか。それを良い事に山賊が出入りするようになったそうです」
「となると…行くならできるだけ早い方がいいな。」
「ええ。明日にでも早速…」

ウィルの面倒は宿屋でレイチェルがみることになり、セレス、アレン、カインの3人で鉱山へ行くことになった。念のため、レイチェルがウィルから聞き出して書いた似顔絵と、お弁当を持たせてくれた。
「気をつけてくださいね」
「ああ。行ってきます」
山賊に出会う可能性もあるので、念のため剣を携え、鉱山に向かって歩き出した。
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