メイン小説

□荒野の故郷
1ページ/14ページ

 リーナが加わり、5人で改めてガーネットを後にするこちになった。次の目的地はガーネットの北西、ファルネスからは北東にある山村、シルミュ村。レイチェルの母親の故郷らしい。
「本当に、そこに行ってもいいんですか?」
「もちろん。元々あてのないものだからね。都会だけじゃなく、いわゆる田舎や地方都市でも首都周辺と同じようにみていきたいから」
 自分で行きたいと言ってみたものの、不安そうなレイチェルに優しい笑顔で答えるセレス。首都ファルネスだけに政治の恩賞を与えるばかりではだめなのである。しかし、森を進むうち、次第にうっそうとしてくる。ただならぬ気配を感じ、カインが口を開いた。
「アレン、こっちで道あってるのか?」
「…そのはずですよ。これ最新の地図ですし…」
「あの、これ…左右逆じゃないですか…?」
 リーナが恐る恐る地図記号を指差した。
「ほら、ここにファルネスですよね、だとすると…」
 彼女の言うとおりだった。ファルネスから見ればガーネットは東にあるはずだが、その地図では西にある。
「しまった…まがいものをつかまされたんですか!?」
 唖然とするアレン。普段冷静な彼が目をまるくするくらいだから、余計ショックが大きいようだ。そのまま、同じ場所に立ちすくむこと数十秒。はぁ、とため息が漏れる。
「どうする?戻るか?」
 カインが少しおどけて問い掛ける。しかし。
「…申し訳ありません、これは僕の落ち度です。これでは…どこにいるのか見当がつきません」
 何か方角のわかるような、切り株などを探すが、一向に見付からない。ただ手入れのされていない道が続くだけである。しかし、それでも道があるということは、この先に街があるのかもしれない。
「まぁ仕方ない、ガーネットまでは地図なしで来れたもんな…とりあえず、この道を進んでみよう。危険がないうちに引き返せばいい」
 その先に、何かがあると信じて進む一行だが、期待はドンドンと薄れていった。次第に日も暮れかかり、そろそろ戻ろうかという時、そう遠くない場所に何かを見つけた。
「セレス様、あれ…!」
 レイチェルが指差した方向に、塔が見えた。ボロボロではあるようだが、アレンがいうには悪い気配は感じないらしい。
「運がよければ、あそこで一泊させてもらえるかもな、行ってみよう」

 近付くにつれ、その建物の全体が見えてきた。それはただの塔ではなく、城だった。それも、かなり朽ち果てている。
「ん?明かりか…?」
 どこかでチカチカと火のようなものが揺れているようだ。すぐに隠れたが、生き物らしい気配がする。
「人が住んでいるような感じですね。くもの巣がかかっていないようですし…」
「あれ、看板ですね。城の名前とか書いてないかな…」
 カインが立て看板にかけより、覗き込むと、表情が一変した。すぐさま、あたりを見回す。そしてもう一度看板を見ると、セレス達のほうを向き直って叫んだ。
「セレス様!来てください!」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ