☆エド受☆

□真実を映す心の日記帳
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古い造りで、決して綺麗とは言い難い酒場。
しかし、落ち着いた静かな雰囲気で不快感は感じさせず、皆静かに酒に浸る。
そんな中だからこそその女性の声はよく響いた。

「何でわかってくれないの!」

明るいめの茶色の髪にブルーの瞳の女性は、向かいに座っているおそらく恋人であろう男に半ば怒鳴るように声をあげた。
周りの人々がチラリと視線をそちらに向ける。
女性はそれに気付くと少し恥ずかしそうに顔を俯けた。
普通茶色の髪に青い瞳はあまり合わないものだが、その女性は明らかに美人の部類に入る綺麗な顔立ちをしている。
女は不服そうな顔で相手を睨むと、さっきより声のトーンを落とした。

「何でそう心配性なのよ!あなたは!!」

「心配して当然だろ!君が戦場になんて!」

穏やかで優しい目をした男が言葉通り心底心配そうな顔で言った。
男の顔もなかなか整っており、似合いのカップルだ。
ただ、少し優しすぎる顔つきが頼りなくも見えてしまうが・・・

「・・・・・心配してくれるのは嬉しいけど、私は行きたいの。今のこの仕事に・・・・・軍にいることに私は誇りを持ってるわ。一般人からどう見られようとも、私は父さんのような誇り高き軍人でいたいの。確かに良い所ばかりではない・・・ううん・・・嫌われて当然というところの方が多いけど・・・・・私は軍がそれだけじゃないことを知ってる。」

女は真剣な目で語った。
男はその真剣な瞳から視線が離せない。

「父さんは確かに親友を守って戦場で亡くなったは・・・・・でも私は違う。必ず戻ってくる・・・・・あなたもこのまえわかってくれたと思ったのに・・・・・」

「確かに前は行く事をしぶしぶ了承したさ・・・・・でもやっぱり・・・・・君を失うと思うと怖い。どうしようもなく・・・・」

男の目は不安で満ちて少し潤んだように見えた。
女はふっと柔らかく笑みを浮かべると相手の頬に触れた。

「大丈夫よ。私は後方支援だもの・・・・・必ずあなたのところに戻ってくるわ。だからそんな顔しないでよ。あなたのそんな顔に私は弱いのよ」

その言葉に男は黙ってしまう。
彼女が言ってもきかないことをわかっていたのだが、どうしても「行かないでほしい」と言わずにはいられなかったのだ。
でも、やはりこの目の前にいる女(ヒト)をひき止められないことを悟った。

「わかったよ・・・・・待ってる。戻ってきたら必ず真っ先に僕に会いに来てくれよ?」

「もちろん。私にはホークアイ少佐にも認められた射撃の腕があるのよ!第二の鷹の目なんだから」

女は少しおどけたように言って笑った。
男もつられて微笑む。

「今からいつもの場所で星でも見てから帰らないかい?君の無事を星たちに願うよ。」

「ほんとに心配性ね。でも・・・・・星は見たいわ。」

「じゃあ先に出て車で待ってて、代金払ったらすぐに行くから」

そう言って車のキーを渡すと、女は「わかった」と言って店を出て行った。
ポケットから財布を取り出し、支払いを済ませようとした時、カウンターで一人で酒を飲んでいた老人が男に声をかける。

「あんた・・・・・」

男はその声に振り向いた。

「何です?」

身なりはあまり清潔感を感じさせない老人。
いや、よく見るとまだ老人と言うには若すぎる。
40前後だろうか。
声も老人のしわがれた声ではない。
はっきりと言葉の聞き取れる声だ。
ぼさぼさでかなり伸びている金色の髪に青い瞳、髭もいったいどれだけ長い間剃っていないのやら。
その髭の男はゆっくりと言葉を発した。

「・・・・・あんた、あの女を戦場に行かせない方が良い。」

「はぁ・・・しかし彼女は言い出したら聞かないもので・・・・・」

「戦場は人を変える。とくにあんな純粋そうなやつは・・・。帰ってきたらひでぇ女になってるかもな。」

そう言って髭の男は人を莫迦にしているような笑みを浮かべた。
男はその言葉にムッとした。

「僕たちのことを他人のあなたにどうこう言われる筋合いないです。彼女は生きてさえ帰ってくれば変わったりなんてしません!!」

男はカウンターの上にお金を置き、マスターに一言声をかけると、少々不機嫌そうに店を出て行った。
髭の男はぐいっとウイスキーを飲み干すと、自嘲するような笑みを浮かべる。

「俺も昔は・・・そう・・・思って・・・」

芽生え、成長をしていこうとする純粋な若葉。
その若葉が折れて枯れてしまうことを恐れていた。
壊れることを、消えてしまうことを・・・・
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