☆ロイ受☆

□雪の記憶
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孤独から逃げたいが為に頭にあの人の顔が浮かぶ、過去にしがみつき、現実を捨ててみようかとさえ思う。
すべては孤独という恐怖に襲われた結果。
「・・・・・クリスマスなど・・・・・ろくなものじゃないな・・・・・」
ロイは自分の弱さを感じずにはいられなかった。
あの男がいないと自分はこんなにも弱いのだと・・・・・・・・・・・
ふとロイが水面に目を向けると、月がゆれている。
ほんの少し船から離れてところに、神秘的な美しさを纏って月の光は乱反射していた。
静かな美しさが妙にロイをひきつける。
だが、船が進めど進めどその美しい領域にたどり着くことはない。
その美しさに触れることはできない。
近くにあるのに遠い存在。
そうちょうどロイにとってのヒューズのような存在だった。
いつも心のどこかにいて離れることがないのに、手が届くことは決してない。
「・・・・・お前なんかを・・・月のような高貴なものに例えたら罰が当たるな・・・・・・・」
ロイは儚げに笑う。
そして、しばらくの間ずっと届かぬ月を眺め続けた。
誰かに語りかけているかのような漆黒の瞳で反射した月の光を見続けてる。
ただ時を忘れて月に魅せられる。
そのまま二時間ほどロイの心は月に奪われていた・・・いや・・・手の届かぬところにいる男に奪われているのかもしれない。
そして、再びロイが現実に戻るのは目的地へついたときだった。


船からおりるとそこは白銀の世界。
銀時計をあけて時間を確かめると11時55分
あと5分でクリスマスへと変わる。
ロイがそっと雪の上に足をおろすと、柔らかい雪がロイの足を包み込んだ。
そのまま足を進めていくと白い中にコバルトの影がいくつもいくつもできていく。
ロイは一度足を止め吸い込まれるように雪の中に倒れこんだ。
そのままロイはただただ雪を感じる。
なぜか雪を愛しく思う。
「・・・・・俺と・・・にているのか・・・・・・?」
ロイはそう言って小さく笑った。
その笑みは雪のように今にも溶けてしまいそうだった。
「・・・・・白い・・・・・雪・・・・・・」
すべてのものを拒否するかのように真っ白な雪はまさに孤独の象徴とも言える。
ロイはその雪に自分を重ねた。
孤独で弱い自分を・・・・・・
だが、彼は雪が受け入れることのない焔の持ち主でもある。
彼は弱くだからこそ強い・・・・・
「今だけ・・・・・お前の記憶の中にいさせてくれ・・・・・・・大丈夫・・・・・・・
私もいつまでもいる気などないさ・・・・・・」
ただ今だけは・・・・・弱い自分でいたかった。
また歩き出さなければならないからこそ今ここですべての弱さを出し切ってしまいたかったのだろう。
今日はクリスマス、そんな小さな願いくらい叶えてもいいではないかとロイは自分を納得させる
雪は酷く冷たい・・・でも優しくロイを受け入れて包み込む。










人という温もりからはなれて



たまには冷たさを感じてみたくなる



この雪の中に置き去りにして



優しさから遠ざけて・・・・・



優しさから遠いこの場所は



あなたとの温かかった思い出に浸るに相応しい



いつまでも立ち止まれぬこの身だから



今日を最後の宴会としよう



たった一人で行うあなたと二人の宴会を



記憶という酒に酔いながら・・・・・



Merry Christmas









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