☆ロイ受☆

□§heal§
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「・・・そりゃどうもすいませんねぇ・・・・・安心しろよ。疲れてるお前さんをさらに疲れさせるようなことはせんから」

「どうだかな」

信用ねぇなぁっと言いながらヒューズは笑った。
ロイは久々に見るヒューズの笑みに何故か大きな安心感を覚える。
そしてその安心感はロイの瞼に重みを与えた。
ヒューズが何かを話している声がだんだんと遠のいていく。
意識がなくなる瞬間ヒューズが名を呼んだ気がしたが、ロイはそれに答える余裕はなかっ
た。
身体はすっかり『疲れ』に蝕まれていたのだ。

「ロイ??・・・・・・・・・・・寝やがったな・・・・・まったく・・・・・」

ヒューズはロイの顔を覗き込んだ。

「ん?」

顔を近づけた瞬間香水の香りがヒューズの鼻をくすぐる。
甘いけれどきつい香り。
あまり良い香りだとはヒューズは思えなかった。
それは紛れもなく女物の香水の香りだ。

「帰ってきたばかりだってーのに・・・・・」

ヒューズは苦笑いを浮かべながらロイの発火布を外してやる。
自分の部屋であまりつけておいてほしくないというのがヒューズの本音だ。
発火布は警戒の証なのだから・・・・・
しかし、そこにはヒューズをさらに驚かすモノがあった。

「っ・・・・・」

ヒューズはロイの手から外した発火布をテーブルの上に置くと深く溜息をついた。
そして、しばらく異常なまでに白く少しやつれた様に見えるロイの顔を見つめ、目を伏せ
る。

「とりあえず起きるまで待つか・・・・・」

ヒューズはまたロイの向かいに座りなおすと、傍に置いてあった本を手にとり、しおりを挿んでおいたページを開ける。
そのまま細々と書かれた字を頭と目を使って読み始めた。
ロイが起きるまでの暇潰しだ。
時計の針の動く音を微かに意識しながらもヒューズは本に集中していった・・・・











憎しみ 怨み 苦しみに



淀んだ瞳・・・・・



救いを求めて伸ばされた血に汚れた手・・・・・







異臭が鼻を鼻をつく

酷く焦げ臭い

人間の肉の焼ける匂い

異臭がきつすぎて

自分が今酸素を吸えているのか疑わしい

何か

何かもっと別の気体を吸っているような

異臭が酸素に溶け込んでいるかのような

吐き気を感じるほどに熱くて

淀みきった空気

血塗られた手

救いを求めてのばされた手

淀んだ瞳

見るな!!

近寄るな!!

私は救えない

何もできない

恐怖 恐怖 恐怖

ガッ!!!

踏みつけられた手

様々な恐怖の色は

魔力を持ち

人を狂わせ

錯乱させる

ガッ!!グシッ!!!

救いを求める手を強く強く踏みつける





馬鹿だなぁ

何やってんだよ





はぁはぁ・・・・・はぁ・・・

荒い呼吸を止めることなく

踏み続ける

はぁ・・・・・うぅっ・・・・・

喉から呻くように出た声

痛い

何故か痛い





痛いのは当たり前だろ?

おかしな事をする

自分の手を踏んで・・・

痛くないわけないじゃないか





血塗られた

どす黒いような赤に染まった

自分の・・・・・手・・・・・・・・・







「っううっ!!ぅあっ・・・・・はぁはぁ・・・・」

ロイは小さな、でも酷く苦しげな呻き声と共に目を覚ました。
ヒューズはハッとしたようにロイの方へと目を向けた。
ロイの額には汗が滲んでいて呼吸も少し荒い。

「おい・・・大丈夫か・・・?」

まだ悪夢の余韻が抜けていなかったのか、ヒューズの声に驚いたようにロイはビクリと肩を揺らす。

「・・・・・・・・・あっあぁ・・・・・・・眠ってしまったらしいな・・・・・」

ロイは少し目線を落とした状態で目を伏せる。
そして、呼吸を整えながら額の汗を拭うように髪をかきあげた。
ゆっくりと目をあけると、目の前に自分の手首が見えた。
ロイは反射的にソレを隠すようにソファーにおしつける。
そして、確かめるようにヒューズの方へと視線を送って無言で問う。

「ここは戦場じゃないからな・・・・・」

その視線の意味を瞬時に読み取りヒューズはそれだけ答えた。
ロイは何も言えないっといった様子で沈黙する。
ヒューズはロイから言葉がないかしばし待つ。
長くも短くもない微妙な沈黙だった。
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