Dream-ソノタ
□黒曜編の舞台裏!
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前触れもなく、やはり空へと蹴りを放ち住宅の塀の手前でその攻撃を止める。
「私が、逃がすとでも思った?」
いや、攻撃を止めた訳ではない。
不自然なほどに塀と彼女の足との間に空間があった。
まるで、"何か"を間に挟んでいるかのようだ。
そして、"何か"を塀へと強く押し付ける。
「…見えて、いるのですか?僕が」
「いいや、"何となく"そこにいると思った」
「………恐ろしい人だ、貴女は」
"何か"が息を飲む。
自分の実力が伝わったらしい、隙を窺い幾通りものパターンを頭の中で浮かべては消し、浮かべては消して突破案を考えているらしい。
ただ、最優先事項は自分から逃げることなのは明白だ。
"何か"から殺気が全くと言っていいほど感じられない。
「……つまらないね」
足を下ろして、"何か"に対して背中を見せて歩き出す。
それに戸惑いを見せたのは他でもない、その"何か"であった。
「…見逃して、くれるのですか?」
「勘違いしないことだね、別に見逃すつもりはないよ。ただ、君は恭弥に当てさせた方がいいと判断しただけだからね」
「雲雀恭弥に…?」
「いい刺激になっていいんじゃないかと思ってね」
「…僕は当て馬ですか」
呆れて何も言えなくなった"何か"を今度こそ放って、彼女はその場を歩き去った。
彼女が近くにいないことを確認してから、"何か"が姿を現す。
冷や汗を大量に流した黒曜中の制服を着た男子生徒は、詰めていた息を吐き出し、塀に背中を預けた。
「……ッ冗談じゃない、何なんだ、あの女は!」
あんな猛獣が、この平和な島国にいるなんて聞いていない。
未だに震える手で、左右異なる色彩の瞳を覆う。
「雲雀恭弥は、ボンゴレに関わっていたとしても生きて返した方が良さそうだ…」
彼女の力は味方にすれば魅力的ではあるが、あの猛獣を飼いならせる自信は、流石にない。
ならば、せめて敵に回さないようにしなければ。
「更に慎重に、ことを進めなければいけませんね…しかし……クフフ、まさかここまで僕が恐怖を感じるとは…雲雀、覚えておきますよ」
そうして、彼…六道骸は姿を消した。
(雲雀様)(何?)(雲雀様宛に"並盛を騒がせる許可をください。夕刻の術師"との手紙が)(…あぁ、アイツか。いいよ、でも、恭弥には知らせないでね、いい修行になるから)
(私がいなくなっても、生きていけるように、ね)