Dream-ソノタ
□黒曜編の舞台裏!
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とある日の夕方。
これと言って何かがあったわけではない。
予兆もなかった。
ただ、彼女曰く"なんとなく"。
自分の直感を信じて彼女は動いていた。
己の背後、空へと足を蹴り上げる。
ただ空気を蹴るだけの、風だけが起こるはずの唐突で何の脈絡もない蹴り。
「ぐぁっ!」
息を飲む声と、蹴りを受けた打撃音。
何もないはずの空間で、確かに命中した蹴りに続けて別の足で再度攻撃をするも、それは避けられたらしく感覚はなかった。
やはり自分の直感は当たったらしい。
見えない敵に、目を凝らす。
「……術師だね」
敵は未だ、見えない。
「……クフフ、まさか一般人が幻術をご存知とは思いませんでした」
聞き覚えのない声。
声から場所を特定しようにも、まるで反響しているかのように声が響くため不可能に近い。
成る程、並大抵の術師ではないらしい。
場所を特定できない。
「一般人、ね……ふん、その一般人の私に何の用?」
「いえ、貴女に用はありません。ただ、並盛中強さランキング1位の雲雀恭弥の弱点が貴女だ、とお聞きしたものですから」
「恭弥の?」
「ですが、どうやら一筋縄ではいかないらしいですね」
「人質にでも使うつもりだったわけね」
「えぇ、ですが、止めておきましょう。貴女は大人しく人質になってくれる方ではなさそうだ」
「それで、逃げるの?」
「……雲雀恭弥の弱点は他にもありますから」
「へぇ」
そして、彼女の瞳が鋭く"何も"ない空間を貫く。