Dream-ソノタ

□雲雀姉弟バラバラに!?
1ページ/1ページ

「今年度で並盛中を卒業しようと思うんだ」


夕食の席で唐突に言われた恭弥の言葉に、動きを止める。


「……姉さん?」


「……いや」


動揺を隠すように短く返して箸を動かす。
普通にしていても恭弥の年齢だと卒業していても遅くはない。一年遅いぐらいだ。
なのに卒業をすると言い始めたことに、彼女の脳裏に並盛を騒がせる茶髪のツンツン頭の少年を始めとする面々が浮かぶ。
彼らも今年度で卒業する。つまり、そういうことだろう。


「……良いんじゃないの。恭弥が決めたなら」


「うん。彼らと共にするつもりはないけど、強い人間が集まるから興味深くてね」


楽しそうに笑う(草食動物が見たら真っ青になるが)恭弥を見て、彼女は納得の表情を浮かべる。
弟なりに道を見つけたのだろう。
自分以外の興味を見つけたのだし、少しではあるが安心した。


――――僕、絶対に中学卒業しないから!


そう決意した恭弥はもういない。
『僕、ひとりぼっちになっちゃうの…?』と泣いていた幼い弟はもういない。
もう大丈夫なのだ。自分の庇護下にいなくとも。
恭弥は強くなった。


「……あの人を呼ばないとね」


「え?あぁ、母さんのこと?そうだね」


「それから、明日から並盛の事は恭弥に一任するために叩き込むから、覚悟していなね」


「僕、に?うん!分かった!」


姉に認められたことが嬉しいのだろう、ニコニコと幼い頃と変わらない笑顔を浮かべる恭弥に姉も笑う。
恭弥も姉離れしたんだから、自分も弟離れしなきゃなぁ、と思っているなんて、恭弥は思ってもいなかった。






「……姉さんは?」


新年度になり、忽然と姿を消した姉の行方を尋ねた恭弥に、いつもにこやかな母は絶句することになった。
勿論、自分の中学卒業を期に姉が父の家業を継ぐ話を聞いた恭弥もまたショックで絶望の表情となる。

当の本人も飛行機の中で、少し寂しさに顔を曇らせていた。

その日、雲雀一家全員が珍しく格好を崩していたことを、誰も知る由もない。




雲雀姉弟バラバラに!?




(……)(恭ちゃーん!?息をしてーー!!)

(はぁ)(……雲雀様のアンニュイの表情……たまんない!)(……雲雀様に聞こえるわよ、葉月)(分かってるわよ、陽月!)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ