外伝夢弐

□烏・後編
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熊野本宮大社。本殿近く。

跡部は宿泊先から走ってやって来た。本宮にくれば何か分かるかと思った。
そんな直感で動くのは初めてに近い。


―――俺は何かに餓えている…何かを求めている…

己の願いのため、それだけに走っていた。
途方に遠い願い、自力だけでは手に届きそうにない願い…
それが手に届く好機でもあった。
乱れた呼吸でゆっくりと本殿に近づいて行った。

「おい、誰か…いるんだろう?」

本殿には院の熊野詣で人が出払っていた。見渡す限り誰もいなかった。
烏の鳴き声だけが響いていた。
見上げれば烏が空、本殿、木の上から、跡部を見張っているかのようだった。


「烏よ、俺様に天を見せてみろ!!」


跡部の叫び声が一面に響いた。


その瞬間……烏の声は止んだ……



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